欧州

2024.07.01 12:30

国境から150kmにある滑空爆弾攻撃機の「巣窟」、ウクライナの攻撃阻む米国の制約

2014年5月、ロシア南部ボロネジ州のボロネジ・マリシェボ航空基地で発進準備中のSu-34戦闘爆撃機(Vladimir Mulder / Shutterstock.com)

F-16に関して最大の問題は、ロシア側が地上に配備している防空兵器だ。そうした兵器のため、ウクライナ軍機が高高度を飛行するのは国内のほぼどの空域でもきわめて危険だが、前線から160kmくらいまではロシア軍のS-400地対空ミサイルシステムの射程内に十分入るのでとくに危険だ。
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「前線近くでは、自機がロシア軍の何層もある【略】地対空ミサイルシステムに探知され、撃墜されるのを避けるため、ウクライナ軍のパイロットは非常に低い高度での飛行を余儀なくされるだろう」とブロンクは書いている。「これほど高度が低いと、(F-16などから発射される)ミサイルは空力抵抗が大きい高密度の空気の中からスタートし、目標が位置する高度に到達するために重力に逆らって上昇しなくてはならない」ので、射程が制限されることになる。

ウクライナは、長距離攻撃ドローンでならいつでもボロネジ・マリシェボ航空基地を狙えそうだ。実際、Su-34が配備されている別の2基地、ロシア南部クラスノダール地方のクショフスカヤ航空基地とロストフ州のモロゾフスク航空基地に対しては最近、ドローン攻撃を実行しており、スホーイ数機を損傷させるか撃破したとみられる。両基地ともウクライナ東部の前線から200km以上離れている。

ただ、どういうわけか、ボロネジ・マリシェボ航空基地はこれまで激しいドローンを受けていない。F-16にとっても難題になる厚い防空網に阻まれているのかもしれない。
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ウクライナ側がボロネジ・マリシェボ航空基地を攻撃し、残忍な滑空爆弾作戦を鈍らせるには、やはりATACMSが最適だと考えられる。とはいえ、ウクライナはおそらく、米国から事前承認を受けていない目標にATACMSを用いて、今後の供給を危うくしようとはしないだろう。

だからウクライナは、この基地に対するATACMSでの攻撃が米国から近く認められるのを待ち望んでいるのだ。ウクライナ軍のあるドローン指揮官はワシントン・ポスト紙にこう吐露している。「ハルキウに向かって頭上を飛んでいくミサイルを見ながら、また誰かの家が破壊されるのだろうかと考えるのは苦痛です」

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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