サイエンス

2024.06.29 13:00

「思春期の子ども」との正しい接し方、専門家からのアドバイス

Getty Images

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子どもが10代になったとき、多くの親は、わが子とのつながりが絶たれてしまったように感じて、こんなふうに嘆くことがある。

・「うちの子の心は、親からどんどん離れていっているようだ。親子関係はもう、以前とは違う」
・「子どもの成長があまりにも速く、関係を維持してついていくのに苦労している」
・「考え方などが食い違っていて、いくら努力しても、その溝を埋められない気がする」

米ミシガン大学ヘルスシステムC.S.モット小児病院が2022年に実施した全米規模の世論調査によると、「思春期のわが子が問題を抱えていると思ったときは声をかける」と答えた親は82%に上る。ところが、「10代のわが子は、問題を抱えたら、親である自分に相談するだろう」と答えた親は4人に1人にとどまった。

思春期は不安定な時期だ。変化が激しく、自分を発見しようとするプロセスで失敗することも多い。心の内に葛藤を抱え、仲間から認められたいと願い、アイデンティティを形成しようとする年ごろだ。だからこそ、無条件で頼ることができる周囲の支えが不可欠になる。思春期の子どもに安心感と帰属意識を与える上では、親の支えはとりわけ重要な役割を果たす。

荒れがちな思春期という時期に、子どもとの確かな結びつきを維持するためには、次の点に留意してほしい。

1. 自主性を尊重する

10代は、人生の新たな側面を見いだし、探っていく時期であるため、親はわが子の心が離れていくような気持ちになるかもしれない。親子の結びつきが絶たれる気がして、不安を覚えることもあるだろう。子どもが新しい人と交流し、友人をつくり、これまでにない体験を積んでいれば、なおのこと不安は募る。

思春期の芽生えと、中学・高校への進学で、人生は新しい段階へと進んでいく。そうした時期に子どもたちは、仲間からのけ者にされたり、決めつけられたりすることを恐れる。それは、自分が世界中から見られているような気がするからだ。こうした、自分の外見や行動が他者から注目されていると過大評価する傾向を、研究者らは「スポットライト効果」と呼んでいる。

人付き合いで危機感を覚えると、幼いころから親が注意深く教育してきた信念や価値観が揺らぐことがある。だからといって、親の影響が衰えてきているというわけではない。青年期心理学などを扱う学術誌のJournal of Youth and Adolescenceで発表された研究論文によれば、親の影響力が衰えてきているというよりは、ティーンエイジャーの子どもの世界が広がっているのだ。

親は、思春期になった子どもに対しても、幼かったころと同じように接しがちだ。だから、子どもが以前と違う態度を見せると、不満を感じることになる。10代の子どもが、いつになく不機嫌に見え、以前より距離を取ろうとし、親と対立することも増えるかもしれない。それまでは問題なかったやり方が、不意に通用しなくなってしまうのだ。

こうしたとき親は、子どもへの接し方を、次のような方法で現状に適応させることができる。

・親の権威を過度に振りかざさない:

成長に伴う子どもの変化を認めることが肝心だ。決めつけず、子どもの変化を心から喜び、受け入れよう。子どもをつなぎとめようとしすぎると、逆効果になりかねない。反抗するようになったり、コミュニケーションがいっさい取れなくなったりする可能性もある。むやみに威圧したり、「ああしろ、こうしろ」と求めたりするのはやめよう。それよりも、友好的な姿勢で子どもを導き、子どもの自主性を尊重する方がいい。

・受け入れ、順応する:

思春期の子どもを、ありのままで受け入れよう。自分の興味関心を広げ、人間として成長しつつある子どもに、親も順応し、個性を尊重し、大事にしよう。押し付けがましい態度をとらず、目の前にいる子どもを尊重するよう心がけよう。助けが必要なときはいつでもそばにいることを伝えつつ、けれども、子どもが自力でさまざまなことを乗り超えていけるような自由を提供しよう。

自主性を尊重し、自ら決断して過ちから学ぶよう励まそう。必要に応じてアドバイスしてもいいが、親の考えを押しつけることは避けよう。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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