サイエンス

2024.06.22 11:00

「傍観者効果」にご用心 悲劇的な事件の実例と今すぐとれる対策

Shutterstock.com

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落とし物をした人を目撃したとき「周りにはたくさん人がいる。誰かが拾ってあげるだろう」と考えて知らんぷりしてしまったことはないだろうか。あるいは、ヒッチハイクをしようとしている人がいても「きっと他の車が止まるに違いない」と自分に言い聞かせて、そのまま通り過ぎてしまったことは?

「傍観者効果」として知られるこの心理現象は、たいていの場合は比較的無害に思える。落とし物のペンも、立ち往生した旅行者も、私たちが何も行動を起こさなかったからといって、特に大事に発展することはないかもしれない。

だが、傍観者効果が壊滅的な惨事をもたらしかねない深刻な状況もある。危機的な状況において誰も行動を起こさなかった場合、待っているのは悲劇的な結末だ。なぜ傍観者効果は生じるのか、その結果どのような痛ましい事件が起こったのか、実例を挙げて解説しよう。

傍観者効果とは何か

米国心理学会(APA)の発行する学術誌Psychological Bulletin(心理学紀要)に2011年に掲載された研究論文では、傍観者効果について、その場に他者が居合わせると被害者に支援の手を差し伸べる確率が下がるという社会心理学的現象だと説明している。

言い換えれば、他の人がいると、自分が被害者を助けなければならない責任の度合いは薄いと考えてしまうということだ。その結果、誰もが他の人が行動を起こすに違いないと思い込み、実際には誰も助けに入らない場合が多い。この不作為には、いくつかの重要なメカニズムが影響している。

・責任の分散:その場に複数の傍観者がいると、個人の責任感は希薄になる。それぞれ他の誰かが介入してくれると信じるため、自分が行動しなければならないという各自の切迫感が薄れる。責任感が分散した結果、誰も責任を引き受けようとしなくなり、傍観者全体の不作為につながる。

・評価懸念:人は、ある状況に介入した場合に他者からどんな評価を受けるかを心配しがちだ。何が起こっているのか、どのように助ければいいのかわからない場合は、特に評価を気にする。恥ずかしい思いをしたり、間違いを犯したりすることを恐れるあまり、相手が助けを切実に必要としている場合でも自ら一歩踏み出すという決断ができなくなる。

・多元的無知:あいまいな状況下では、人は周囲の反応を見て、どう行動すべきかのヒントを得ようとする傾向がある。しかし、誰も行動を起こしていない場合、各人は自分が行動しないことも正当化されると思い込む。この相互不作為がフィードバックループを生み、みんなが動かないのなら動く必要はないと全員が決めてかかってしまう。
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翻訳・編集=荻原藤緒

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