こうした考え方は、友人関係やプラトニックなクイア同士の関係といった、恋愛によらない「人との繋がり」の価値を低く見るものであり、アロマンティックの人たちを「いい人」がまだ人生に現れていない、悲しく孤独な存在と捉える。本人たちにとって「おひとりさま」生活がカップルと同じくらい充実したものであったとしても、だ。
研究チームは、こう説明している。「おそらくはアロマンティックへの誤解と、恋愛伴侶規範が支配的になっている現状のせいで、アロマンティックの人の多くは自身が『未熟、目立ちたがり、自分勝手、酷薄』といったイメージで捉えられていると感じている。また、『人との関係に問題を抱えている』『人間らしい要素がどこか欠けている』と思われることも多い」
現在、社会で最も価値ある関係とみなされているのは「異性間の婚姻関係」であり、著しく高い法的・社会的認知を得ている。こうした現状が、枠にはまらないアロマンティックの人たちを周縁に追いやっている。
これらのステレオタイプは有害な言説を生み出し、アロマンティックの当事者にマイナスの影響をもたらしている。具体的には、恋愛に価値を置く規範に合わせなければならないとプレッシャーを感じたり、批判を避けるため本来の恋愛的指向を隠したり、社会的孤立や他者に受け入れられない状況に直面したり、といったことだ。
アロマンティックの人たちが直面する偏見は根強く、難しい問題だが、今回の研究では多くの当事者にとって、自身がアロマンティックであるというアイデンティティーの意識化が人生を一変させ、力づけられる体験となったことも判明している。
研究に参加した人の多くが、意識化をターニングポイントと表現している。そして、社会の常識にとらわれることをやめ、自分を受け入れ、他者との関係を再定義してさらに豊かなものとし、真の意味で自分らしく生きるきっかけになったと述べている。
ここまで紹介してきた研究の知見は、アロマンティックを自認する人すべての体験に当てはまるわけではない。それでも、恋愛伴侶規範に疑問を投げかけ、個々人の指向を尊重することの重要さに光を当てるものだ。
これらの誤解に挑戦し、多様な人間関係のありようを認め尊重するように促すことは、より安全で包摂的な世界を目指すための重要なステップといえる。
(forbes.com 原文)