サイエンス

2024.05.12 17:00

まるで愛のクスリ? 「フェロモン」が人間関係の中で果たす役割

木村拓哉
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フェロモンは、同種の個体間の社会的相互作用を導く重要な役割を果たす、捕えにくくかつ強力な生化学的シグナルである。「pherein(運ぶ)」と「hormon(興奮させる)」というギリシャ語に由来するこの化学物質は、交尾、領域標識、さらには攻撃性といった様々な行動に影響を与える。

もともと動物の進化の世界で観察されたフェロモンは、動物が生存の課題に立ち向かい、種の継続を確実にするための導きの役割を果たしていた。ヒトの生物学におけるその影響の程度は一度議論されたものの、最近の研究でその重要性が明らかになってきた。

ヒトの関係性にフェロモンが含まれるのは、他の種との共通の祖先と、生物学に組み込まれた進化の連続性に由来する。ヒトの行動に与える影響の全容はまだ明らかになっていないが、フェロモンが気分、魅力、さらには認知過程に個人レベルで影響を与えることは明らかである。

フェロモンが他者とのつながりに影響を与える3つの重要な方法を説明しよう。

1.魅力の化学

フェロモンは、恋愛関係の初期段階で重要な役割を果たし、潜在的パートナーの認識と絆の感覚を育む。若年成人の性的魅力と最初は関連付けられていた男性の汗から出るアンドロスタジエノンというフェロモンは、今では広範な社会情動的影響を持つことが認識されており、脳の感情情報処理を高める。研究によると、アンドロスタジエノンに敏感な人は、怒った顔や幸せな顔などの微妙な感情の手がかりに注意を払う。さらに、アンドロスタジエノンへの敏感さは、多くの友人、親しい人々とのコミュニケーションの増加、社会的イベントやボランティア活動への参加増加と相関している。また、最近の性行為、頻繁な性的思考、人生における性の重要性の認識とも関連していた。
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翻訳=酒匂寛

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