心理学者が解き明かす「結婚恐怖症」 その原因と克服方法

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人生の重大な決断をする前や新しい人間関係に踏み出す前に、不安を感じるのは一般的な現象だ。しかし、将来を約束することを考えただけですさまじい不安感に苛まれ、そうなる状況を何が何でも避けたいという圧倒的な衝動に駆られる人もいる。この恐怖感は「ガモフォビア」(結婚恐怖症)といい、よくある責任感の問題にとどまらず、真剣な交際や結婚に特化した深刻な恐怖症を引き起こす。

ガモフォビアに苦しむ人々は、意味のある人間関係を構築するのが難しく、日常生活に困難をきたすことが多い。ガモフォビアは、約束によってもたらされる実際の危険をはるかに超える不合理な恐怖を特徴とする。これらの症状は長期間にわたり、通常は6ヶ月以上続く。

ガモフォビアの原因は何か?

ガモフォビアは内的・外的な要因の相互作用から生じる。3つ紹介しよう。

1. 過去のトラウマ体験。虐待的な人間関係に苦しんだ経験のある人は、感情的な混乱を避ける防衛機制として、責任を伴う約束に対して深い恐怖を発現させることがある。たとえば、裏切りによるトラウマがPTSDの症状を悪化させるとの研究結果がある。ガモフォビアは盾のように機能し、個人を潜在的な痛みと脆弱性から保護する。

2. 自律性を失うことへの恐れ。研究によると、自律性の欠如は人間関係における息苦しさや抵抗感につながる。それは過去の経験に影響されていることが多い。この強烈な自律性への欲求に突き動かされて、結婚などの長期的な真剣交際を、個性を脅かすものと見なす人もいる。

3. 根底にある関係性の問題。ガモフォビアは多くの場合、愛着障害、自尊心の低さ、親密な関係への恐れなど、より深い心理的問題に起因している。幼少期の経験に根ざした不安定な愛着スタイルは、大人になってから安心できる関係性の形成を阻害する。自尊心が低いと愛される価値があるかどうかを疑うようになり、親密さを恐れることで相手との気持ちの近さや傷つきやすさを避けがちになる。親が未婚であることと、真剣な交際に消極的なこととの相関関係を示唆する研究結果もある。

ガモフォビアに苦しむパートナーに手を差し伸べるには?

ガモフォビアを放置しておくと、個人的にも人間関係においても重大な影響を及ぼす恐れがある。孤立につながり、意味のある人間関係や個人の成長を阻害する可能性がある。責任を伴う約束への恐怖は、パートナー、友人、家族との関係に緊張をもたらし、対立やコミュニケーションの問題を引き起こしかねない。それだけに、ガモフォビアに対処し、健全で満たされた関係性を育むためのサポートを求めることが重要だ。
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翻訳=酒匂寛

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