ノッテボーン:社員が出社を楽しみにするようなオフィスを作るにはどうすればいいか──。多くの企業がいま、頭を悩ませていることでしょうね。アメとムチのアプローチのようなものです。
──今から20年前、グーグルをはじめとしたシリコンバレーのテクノロジー企業の多くがオフィスに卓球台を置いていると話題になったときも、このような話をしていたと思います(笑)。
ノッテボーン:卓球台だけではありませんからね(笑)。私が働いていたグーグルには、ミシュランの星付きレストランのシェフもいましたよ。とはいえ、魅力的な職場をつくることがグーグル創業者のラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンのビジョンで、「卓球台でも置かなければ、みんなが会社に来なくなる」というものではありませんでしたが。実際、グーグルが創業された当時は在宅勤務をする人はいませんでした。
それよりも、職場にいたいだけいられるようにすることが目的だったのです。朝食と夕食が提供され、夜中でもジムが使え、洗濯もできる。平日・休日を問わず、働ける時間帯すべてをカバーしていました。つまり、グーグルでは文字通り何でもできたのです。当時としては革新的で、率直に言って経営の観点からも効果的でしたね。
──世の中全体でリモートワークへの理解が深まり、ツールも拡充されたことで、環境そのものはパンデミック前と変わりましたが、会社がオフィスを充実させている点では、以前のような潮流に戻ろうとしているのかもしれませんね。
ノッテボーン:今は状況が変わりましたね。経営者は、「在宅勤務という選択肢があるのなら、社員をオフィスに出社させるにはどうすればいいか?」と考えていると思います。それには、3つのポイントがあると思います。1つ目は、他の社員も出社していること。オフィスに社員が集まる「アンカーデー(Anchor Days)」と呼ばれる日を設ける会社もあります。社員は、「火曜日なら他の人もいるかな? アンカーデーだからいるか」という具合に出社しやすくなります。全社的な日もあれば、部署ごとの日もあります。例えば、マーケティングチームは火曜日に出社する、という具合ですね。
2つ目は、オフィスで行われている“イベント”に参加する機会を作ることでしょうか。例えば、ゲスト・スピーカーを呼ぶ、あるいはハッピーアワーがあるなど、何か特別なイベントを設けることです。3つ目は、“アメニティ”のようなものです。例えば、「手軽にランチできるか」「IT部門で必要な備品をそろえられるか」「仕事がしやすい環境か」「Zoom会議用のスペースがあるか」といったものですね。