ビジネス

2024.06.11 15:15

出社する意義と、「支持者」の価値 BoxノッテボーンCOOの「仕事論」

──Boxのようなツールは、柔軟な働き方を可能にし、それにより優れた人材を世界中から集まります。ただ素晴らしいアイデアを出すには、時には集まっておしゃべりをすることが有効だったりもします。連帯感も生まれるでしょう。リモートワークと職場での仕事のバランスについてはどうお考えですか?

ノッテボーン:この議論にはいろいろな側面があります。一つは、企業の成長段階とライフサイクルです。もう一つは、社員自身の成長段階とライフサイクルです。

会社のライフサイクルの観点から言えば、組織が50人以下の場合は、直接会って話をすることが決定的に重要だと思います。もちろん遠隔でスタートアップを立ち上げ、顔を合わせることなく成功している会社もあります。しかし、アイデアを共有・実行するには、対面でするほうがはるかに優れているのではないでしょうか。

会社が成熟すればするほど、対面で会う必要性は減ってくるかもしれません。ですが、実際に会って話すことで形成される絆にも価値があります。つまり、会社の成熟度によって働き方が変わってくるということです。

それに加え、社員の成長段階という物差しがあります。新卒〜社会人3年目くらいであれば直接会った方が会わないケースと比べて80%ほど仕事にメリットがあり、社会人3年目〜7年目であれば50%、7年目〜15年目くらいだと30%、15年目〜20年目ともなると20%というような具合に、キャリアの観点からも、スキルセットの観点からも、オフィスで過ごすことのメリットが少なくなってくる、というものです。

ただ、これは難しい問題です。私は20年以上も働いてきたので、スキル開発に限っていえば、以前と比べればオフィスで習得できるものはありません。それでも私が強く感じているのは、オフィスに行くことの重要性です。そうでなければ、新卒〜社会人3年目の社員はいったい誰に学べばいいのでしょうか? 彼・彼女たちこそが、メンタリングやコーチングを必要としているのです。そして、彼・彼女たちからも逆に教わることもあります。

そうしたこともあり、たとえ自分はリモートワークでこと足りるとしても、すべての人がオフィスでコミュニケーションをとることが大事です。とはいえ、通勤時間を節約したり、ワークライフバランスを柔軟にしたり、そういったことに価値を見出す人が多いのも確かです。その点からも、私はある種のバランスを取るべきだと提唱しています。必ずしも毎日、オフィスで過ごす必要はありませんよね。

シリコンバレーのテック企業らしく、オフィスには遊び心がある Courtesy of Box

シリコンバレーのテック企業らしく、オフィスには遊び心がある Courtesy of Box

──企業にとっては大きな課題ですね。優秀な人材を惹きつけたいならば、何らかの選択肢を与える必要があるのはまちがいありませんから。

ノッテボーン:ええ。ただ、この“社会実験”が始まってから3〜4年経つわけですが、社会人になったばかりの社員も、勤務歴が長い社員たちも、フルリモートが許されている、あるいはオフィスに行ったところで誰もいないような会社に入社すると、スキルが身に付かないことに気づき、「メンターやコーチになってくれそうな人たちと働ける環境を選ばなければと、考えるようになった」という話も耳にします。この“社会実験”が軌道に乗るにつれ、そうしたインサイト(洞察)があることも出てきています。
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文 = 井関庸介

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