ビジネス

2024.06.11 15:15

出社する意義と、「支持者」の価値 BoxノッテボーンCOOの「仕事論」

──日本は、中小企業(SME)の数が全体の99.7%(中小企業庁の調査、2021年6月時点)を占めています。大企業顧客を多く抱えるBoxにとって、中小企業は戦略的にどのような位置付けにあるのでしょうか。

ノッテボーン:中小企業は多くの理由から魅力的な潜在顧客です。SMEセグメントにはデジタル・ネイティブの企業が多い傾向があります。誰もが完全にクラウドを利用しているわけでも、デジタル・ネイティブ世代が快適に過ごせるようなデジタル環境ではまだない中、SMEセグメントには非常にクラウドに対して前向きな会社が数多く存在しているからです。

一般的に、SMEセグメントは堅固なプロダクト・マーケット・フィット(自社製品と顧客ニーズの合致)の傾向があり、米国やEMEA(欧州・中東・アフリカ)、そして日本では特にその傾向が見られます。この領域には、SI(システムインテグレータ)や再販業者といったパートナーを通じて顧客に働きかけていきたいと思います。

──SaaSプラットフォームにAIを組み合わせれば、リソースが少ない中小企業にとっては手が届きやすく、利便性の高い製品・サービスになるかもしれません。

ノッテボーン:おっしゃるように、Boxのバリュープロポジション(提供できる顧客価値)は中小企業の力になると思います。平均的な中小企業は、従業員の数が多いとはいえず、リソースに制約があります。BoxのようなAIを実装したツールは、ナレッジワーカーの生産性を飛躍的に向上させられるはずです。それも生成AIなら、従業員を置き換えることなく、作業の業務効率を改善するに留まらず、場合によっては作業そのものを省略することさえできるでしょう。

とはいえ、SME市場は細分化されています。潜在顧客へアクセスするには、やはりパートナー企業との提携が重要です。また、中長期的にはパートナー企業を介することなくBoxを利用したい中小企業も、最初の段階では簡単に、ストレスなくパートナー企業を介して使える方法も検討しています。
 米カリフォルニア州レッドウッドシティにあるBox本社 Courtesy of Box

米カリフォルニア州レッドウッドシティにあるBox本社 Courtesy of Box

──ところで、Boxには7つからなるユニークな社是がありますよね。そのうちの1つ、「Make your mom* (or whomever you value most) proud. (母や、大切な人に誇りに思ってもらえるような仕事をしよう; 人に尊敬される行動を)」など、表現もユニークです。こうした社風についてはどうお考えですか?

ノッテボーン:私は、世の中一般に考えられている以上に「企業文化」が重要だと思っています。テクノロジー企業の進化を振り返ると、さまざまな企業文化があったことに気づかされます。そして、ある程度の技術サイクルや、ブームといった浮き沈みを経験してわかったのは、じつは会社の健康を守るのが「企業文化」だということです。魅力的な企業文化が、優れた人材を惹きつけるからです。

私もこれまでに、社員が「大切にされていない」と感じてしまう企業文化の中で働いたり、その一部であったり、それを目撃したりしています。理由がどうあれ、そうした会社は社員に、苦労を共にしたいと思わせられなかったわけです。すべてのテクノロジー企業は「人材」に依存しています。人がいて初めて、会社は成り立つのです。
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文 = 井関庸介

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