欧州

2024.06.04 12:30

「マッドマックス」なロシア軍、装甲オートバイで戦場を爆走 そして100年前の教訓学ぶ

全地形対応車やオートバイを疾走させ、ウクライナ側のFPVドローンをかわして両軍の中間地帯を突っ切る。もしFPVドローンに追いつかれても、ケージ装甲で止めて車両や乗員への直撃を防ぐ──。ロシア側が理想とするのはこういうものだろう。

理論的には悪くないアイデアだ。ケージ装甲はある程度有効で、世界各国の軍隊で地上車両に採用されている。さらに、ドック入りした潜水艦にも装着されるようになっているらしい。とはいえ、1000馬力のエンジンを搭載する40tほどの戦車に2t程度のケージ装甲を付け足すのと、いずれも100馬力にも満たない1t強の全地形対応車や100kg前後のオートバイに装甲をまとわせるのとでは、やはりわけが違う。

これは軍用オートバイの全盛時代と言える1910〜20年代、いくつもの軍隊が高い代償を払って学んだことだった。スピードが出て小回りがきくオートバイは伝書使や斥候にはうってつけの装備だったが、敵の重火力に直面する可能性のある部隊が用いるにはあまりに脆弱だった。

そこで、一部の軍隊はオートバイを金属板で覆ってみることにした。防護を加えることで、オートバイの役割を広げようとする試みだ。最も有名なのは、スウェーデンのランズベルク社がドイツ軍やデンマーク軍のために開発した数種類の装甲オートバイだろう。

だが結局、これらのバイクはあまりうまくいかなかった。戦車をはじめとする軍用車両のオンライン百科事典「タンク・エンサイクロペディア」によると、デンマーク軍向けに試作されたフアスークスパンサー3(F.P.3)という装甲バイクは、試験で「車両が相当重いため操縦が難しく、クロスカントリーの機動性も非常に低かった。さらに、伝えられるところでは30馬力のエンジンで最高でも時速50kmほどしか出なかった」という。

「装甲オートバイは戦間期に消滅した多くのコンセプトのひとつだ」とタンク・エンサイクロペディアは同じ記事で解説している。「重量が増え、比較的高価で、戦闘能力も限られたため、装甲オートバイは装甲戦闘車両の歴史の脚注にとどまることになった」

つい最近までは、と追記すべきかもしれない。専用の装甲車両を補充できる以上のペースでどんどん失っているロシアは切羽詰まり、1世紀前に葬り去られた装甲軍用パイクというアイデアを復活させることになった。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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