テクノロジー

2024.06.11 14:15

Apple Vision Proは世界、ビジネスをどう変える? XRプラットフォーム「STYLY」に聞く


ただ今はまだ、アプリが少ないんですよね。やっぱりこれまでのデバイスと同じ設計ではダメで、例えば音楽を聴きたい時に、スマホの画面ではリストの形が見やすいけれど、Apple Vision Proではバーチャルのレコード棚が目の前にあって、ジャケットを見て探すほうが便利、みたいなことだったり。

洋服を買いたい時に、バーチャル試着がマストになってきたりといったような、デバイスの可能性に応えたユーザビリティになっていないと スマホで十分とか、スマホのほうが便利ということになってしまいます。
STYLY

2028年頃〜30年の間には「スマホに代わるデバイス」に

──アプリが少ないという課題をはじめ、Apple Vision Proには厳しい評価や販売予測も出ています。空間コンピューティング時代の本格的な到来は、いつ頃どのような形で訪れるでしょうか?

普及するまでには、こんなにでっかいものを着けていられない、こんな高いものなんて買えないと言われている通り、小さくなって、安くなる必要があります。

もしかしたら実は価格はもう安く出せるのかもしれないですけど、いま安く出すと、ずいぶんと頑張らなきゃいけない状況だと思うんですね。まだこれをどう使っていくかをわかっている人があまりいない段階なので、色々な文句が出たりして。だから多分、いま廉価版と呼ばれているようなモデルは、しばらくは無理に売らないと思います。

これまでの流れだと、今ぐらいのクオリティでiPhoneプラスアルファの20万円程度のモデルが、2028年頃から多少後ろ倒しても30年頃までには「スマホに代わる次世代デバイス」として出てくるだろうと予測されます。

そしてやはり、そのためにApple Vision Proを買うというぐらいの「キラーアプリ」が出てくれば、普及の大きなきっかけになると思います。

先ほども少しお話しましたが「仕事で劇的に便利に使える」ことは、大きな可能性の一つだと思います。

もちろん、空間コンピューティングならでは存在感とか空気感を持つものとして、ゲームやエンタメは最たるものでしょうが、オンライン会議なんかもやってみると実はすごくこのメリットが感じられたりします。

ただ、アプリも今はまだおいそれと出せない状況で、しばらくステルスだと思います。

今はその時のために皆んなが仕込みをしている、裏で開発しているという段階で、私たちもSTYLYから様々なコンテンツやビジネスを生み出すべく、事業開発や普及活動を行なっているところです。インターネットやスマホ登場時の情報時代への転換に日本が乗り遅れた過ちのように、キラーコンテンツが出て一気に市場が活発化してから参入するのでは遅いですから。

やはりクリエイターがいる国が強いと思いますので、クオリティの高い日本のクリエイターと一緒にグローバルに打って出たいと考えています。

次世代XRクリエイターの発掘・育成にも力を入れており、PARCO、ロフトワークと共同で「NEWVIEW(ニュービュー)」というプロジェクトの運営もしています。
画像はイメージです

情報が3D化。目の前の空間で扱われる時代に

──空間コンピューティング時代の到来で、生活やビジネスはどのように変化するのでしょうか?

今までPCやスマホの平面でやりとりしていた情報が、目の前の空間で3Dで扱えるようになることで、物理的制約からも解放され、生活も働き方も大きく変わるでしょうし、ビジネスチャンスも大幅に広がります。

空間コンピューティング市場の規模感としては、仮に10億人が毎日8時間利用すると年間約3兆時間という市場が生まれることになります。

すると、広告市場は数百兆円といった規模になるでしょう。手法も、例えば時計会社の提供で毎朝アラームで起こしてくれるといった、日常の中に溶け込んだようなもの、より体験的なものになってきて、精度の高いおすすめの商品が効果的に表示されるようになる。受け手側や色々なことがよく考えられた巨大な市場になります。
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とにかく体験、体感に纏わるものは、ほとんど全てが置き換わると思うんですよね。例えばレコードやCDからストリーミングになり、動画配信になってきた音楽も、次は空間の配信になる。

エンタメやショッピングだけでなく、医療や教育、防災など多岐にわたって活用が進むと思います。
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──そうなるとますますAIの活用・発展が大前提になってきますが、STYLYですでに進めている取組みやAIから受けている影響はありますか?

例えばクリエイティブで、この動画編集はAIでいいよねとか、AI翻訳で結構いけそうだといったケースは増えています。

やはり安くて早い方法が選択されますから、可能ならばAIで、となるのは確実です。

次ページ > リスクとどう付き合っていくべきか 日本企業にチャンスはあるか?

画像=STYLY, Inc. 編集=宇藤智子

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