テクノロジー

2024.06.11 14:15

Apple Vision Proは世界、ビジネスをどう変える? XRプラットフォーム「STYLY」に聞く

STYLY取締役COOの渡邊信彦氏


ただ、AIを活用していくこと自体に人間しかできない部分があるので、求められる役割とスキルが変わるだけで、従来以上に問題になることはないだろうと思っています。
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考え方を変えると、細かい作業や雑多な仕事をやらなくて済むので、皆んなとても楽になると思うんですよ。自分たちでやることとAIに任せられることを上手く分けられれば、私たちにとってプラスでしかない未来を作ることができると思います。

筆は持たないけどAIに指示して創作するといったアーティストが出てくるかもしれないし、将来的にはできるようになるかもしれませんがまだ数十年は、AIだけではこれまでにない新しい企画や表現などは出てこないと思います。というか、そうあってほしいですよね。AIが人間の限界を超えるものだという考えはちょっと寂しくて、誰にでもできる仕事ではないものは、結局は人間の仕事として残っていくのではないでしょうか。そして、そうした事ができる人は、やはり基礎からきちんと積み重ねてきて応用までこなせるプロフェッショナルな人だと思います。

プラットフォームとしては、まだ先ずはこうしたXRコンテンツを自分で作ってもらうといった段階ですが、当然今後に向けて、クリエイティブをサポートするような機能、例えばパーツのデザインだったり、プロンプトで動きをつけたりするのをAIで簡単にできるようにするといった、色々なトライをしています。
画像はイメージです

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シンプルで心地よい、サステナブルな社会・街づくりのために

──先ほど広告のお話もありましたが、AIリコメンドなどが進化し、情報がリアルな3D空間で展開されるようになって、体験の要素が強くなると、より直感的にインパクトをもって伝わるようになります。いつでもどこでもそうした情報にアクセスできることはとても便利なことですが、やはり人への影響は大きいですよね。どのように付き合っていけばよいでしょうか?
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いま情報が溢れすぎていて、生きにくい世の中になっていると思うんです。処理するのが大変で皆んな疲れちゃうので、もっとシンプルに生きるために、余計なものをシャットダウンして必要なものが必要な時にちゃんと提供されることで、人間の負荷がぐっと下がり、幸せになるといいなと。

もちろん確かに様々なリスクはあると思うんですけど、そうならない使い方をしていく。

みんなハイパーリアリティとかディストピアみたいな世界を望んでいない人が大半だと思いますので、そういう方向性ではなく、シンプルで心地よい、サステナブルな社会・街づくりのために空間コンピューティングを使っていきたいと考えています。

リアルの世界で何かしようとした時に、人間の労力や建物・設備など物理的な手段だけでは、法律上難しかったり、人の負担や地球が痛んでサステナブルでない状況で断念したり強行したりといった場面もあるかと思いますが、そうした中にはきっとXRで解決できることがあるはずです。XR活用をどんどん増やして、ハードや人の労力だけに頼りすぎない生活、情報とリアルを連携して賢く使う社会を作っていけたらいいですよね。
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そうなってくると情報だけでなく、全ての業界にビジネスチャンスが訪れ、大きなゲームチェンジがかかります。そこに唯一、情報時代に大きく遅れをとった日本にもう一回チャンスが巡ってくると。

デバイスの開発には数兆円ものコストを要し、アメリカ、中国、台湾、ドイツといった国が断然強いですが、私たちは海外の人たちも広く使えるプラットフォームを狙っていく。

リアルと情報を繋いで「優しい空間や便利な空間、ユニークな空間を作る」といったことは、日本人は絶対得意なはずなんですよね。いよいよ迎える日本再興のチャンスだと考えています。
STYLY空間レイヤー

日本再興のチャンスとは?

──チャンスは、どのようなポイントにあるとお考えでしょうか?

ご承知のとおり、アニメをはじめとしたIPや日本独特の文化はとても強い力を持っていて、海外でも認められていますが、残念ながら今は「コンテンツ大国」でありながら、それを届けるプラットフォームやデバイスが全て海外のものになってしまっています。

コンテンツだけが世界各国で使われている現状は良し悪し両側面があります。

日本のIPが世界に発信され、愛されているのは素晴らしいことですが、やはりほとんどの収益も握られてしまっていて、もっと日本企業の力でできる部分があるんじゃないかと。人気が出ればいい、楽しんでもらえたらいいというだけではなくて、若い人たちが自分たちの才能をもっと活かせるようなものが日本発でできるはずなんです。

なんか古いって言われそうな気もするのですが、でもやっぱりそこは譲っちゃいけないところなんじゃないかなと思っているので、頑張っていきたいんですよね。
STYLY取締役COOの渡邊信彦氏

STYLY取締役COOの渡邊信彦氏

IPを活用し、広告モデルから収益モデルに転換

──STYLYで具体的に描いているビジネスや始めている取組みはありますか? 

先ずはApple Vision Proの普及が進むまでの間に、こうした日本のIPコンテンツを現実の都市空間や商業施設に紐づく「パブリックレイヤー」で、インバウンド含め、多くの方に体験してもらうことが、次のフェーズだと考えています。

過去に私たちが渋谷パルコで開催したXRアートのイベントで1ヵ月に2万5千人に来場いただいた実績がありますので、年間30万人ぐらいの集客は見えています。

その時には何のIPも載っていなかったのですが、例えばパルコの6階には週刊少年ジャンプや任天堂のショップが入っていますが、そうした人気IPの推しのキャラクターと一日一緒にパルコで楽しめる、といったことが技術的にはすでに実現可能で、十分売れていくコンテンツとして提供することができると考えています。

こうなってくると、従来のような広告モデルではなく、収益モデルに変わってきます。

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画像=STYLY, Inc. 編集=宇藤智子

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