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2024.02.09

「未来」を魅せるApple Vision Pro、普及水準は遠いが意味ある一歩

Apple Vision Pro

アップルが「空間コンピュータ」と呼ぶ新しいコンピュータの歴史は、その体験だけを語るならば、まさに次世代への扉に立っていることを実感させるすばらしいものだ。

筆者は日本円で50万円を超える価格となるApple Vision Proを、いち早く入手するために米国まで赴いた。米国外からのVision Pro購入には制約が設けられており、入力言語もサポートするのは英語のみ。アップルがグローバルでの発売前に、本拠地である米国で改良を重ねたい意図が見え隠れする。

しかし前回のコラムで言及したように、この製品がコンピュータの歴史における大きな変節点となる可能性を持っている。Apple Vision Proを昨年の6月に体験して以来、この製品を通じて垣間見える世界を夢想し続けてきた。

いずれ「空間コンピュータ」というコンセプトは、かつての初代iPhoneがそうだったように、パーソナルコンピュータの歴史を変えた製品として思い出されるに違いない。そうした考えは実機を使い始めたのち、さらに強まっている。

現在のApple Vision Proが、一般消費者向けに何らかの道具として推薦できるものであるかと言えば「ノー」だ。Apple Vision Proは、できる限りの工夫と最新技術を投入して開発されているが、まだ技術はこのジャンルの製品を普及させる水準に達していない。

一方で、視線とジェスチャーを用いたユーザーインターフェース設計など、未成熟ながらもソフトウェア設計のレベルは高い。

最上級の映像・音響の体験レベル

民生用の量産コンピュータとして、Apple Vision Proほど複雑な構造を持つ製品は他にないだろう。コンパクトな本体には最新ノートパソコンレベルのコンピュータと産業用に用いられる最高品質のヘッドマウントディスプレイ、それに周囲の空間を立体的に捉え、自分自身の頭や手の動き、あるいは視線や表情を追跡するための各種センサー、それに多数のマイクを備えている。

装着すると目の前には、見慣れたいつもの部屋が広がり、右上にあるDigital Crownを押し下げると、精密なデザインが施されたiPhoneでお馴染みのアイコンが空間に浮かび上がる。

起動するアプリケーションは見慣れた部屋の空間に自由に配置可能であり、時に立体的なモデルはその空間に、実在するかのような立体物として浮かび上がる。

体験の一部はかつてアップルと同様に「空間コンピューティング」を標榜したマイクロソフトのHoloLensシリーズを彷彿とさせるが、視覚全体を奪った上でコンピュータで再合成するApple Vision Proの体験は、確実に前へと前進している。

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編集=安井克至

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