この決済規約の変更は中央銀行の中国人民銀行(PBOC)が主導したものだが、最も恩恵を受けるのは越境モバイル決済Alipay+(アリペイプラス)と提携するスマホ決済サービスのユーザーだ。香港やマカオ、東南アジア、韓国に多く、タイのTrueMoney(トゥルーマネー)やフィリピンのGCash(Gキャッシュ)、韓国のKakao(カカオ)などのeウォレットから、中国国内で販売されている商品やサービスの代金を直接支払える。
そうした提携eウォレットのユーザー以外はAlipayのアプリをダウンロードし、銀行口座やクレジットカードに紐づける必要がある。これは出張や観光で中国を訪れる人にとっては面倒だ。データの安全性をめぐる懸念もある。
金融サービス弱者への配慮
外国人の支払いに関する問題への対応に加え、中国当局は現金払いの拒否を広範に取り締まろうとしている。中国に長く滞在している外国人は、店主らがクレジットカードを拒否して現金での支払いを要求し、現金払いなら価格を安くしていた時代を覚えている。こうした人にとっては、中国の至るところで現金払いを受け付けない現状は皮肉だ。中国人民銀行は5月初め、現金での支払いを拒否したとしてKFC(ケンタッキー・フライド・チキン)のフランチャイズ店を含む7つの事業所に罰金3000〜5万5000人民元(約6万5000〜120万円)を科した。国内で現金払いの環境を維持するための継続的な取り組みの一環だ。国営の中国郵政集団やPICC中国人民財産保険、新華人寿保険の各支店も懲罰の対象となった。2023年後半には中国人寿財産保険の北京支店と自動車ディーラーの北京達世行世紀汽車販売が、現金払いを拒否したとして罰金を科された。