アジア

2024.05.29 09:00

中国キャッシュレス社会の限界、外国人や高齢者には不便

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中国のキャッシュレス化は目覚ましい。現金払いが主流だった社会から、20年足らずでモバイル決済普及率は86%に達した。Alipay(アリペイ)とWeChat Pay(ウィーチャットペイ)がどこでも利用できるようになり、中国での支払いは世界で最も便利で煩わしさのないものになった。

ただし、その利便性を享受するには重要な条件が1つある。決済アプリと紐づけられる中国の銀行口座が必須で、中国金融機関の利用者でなければならない。

これはシステムのバグではなく特徴だ。中国政府は、国内のハイテク企業や大手銀行による強力なデジタル金融サービス産業を発展させようとしている。中国の決済はこれまで世界の金融システムと包括的に統合されてはいなかったが、一部では徐々に変わり始めている。

中国を訪れる外国人は、小売店でのスムーズな支払いができず不便な思いをしてきた。現金で払おうとすると冷たくあしらわれることが多く、外国で発行されたクレジットカードやデビットカードでの支払いは受け付けられないこともある。

中国政府は自国のシステムと国際金融システムの垣根を減らすことを政策としてめざし、外国人が支払い時に経験する面倒に対処すべく取り組んでいる。と同時に、当局は現金払い拒否の取り締まりも行っている。これはとりわけ高齢者に大きな影響を及ぼしそうだ。

小さな一歩

簡単に言えば、外国人が中国でモバイル決済を手軽に利用できるようにする上での問題は、中国のデジタル決済エコシステムが国内で完結していることにある。ビザやマスターカード、アメリカン・エキスプレスなど世界最大手のカード会社は、外国の銀行や著名なフィンテック企業と同様に、中国国内では限定的な事業展開しかしていない。外国人がスムーズに支払いを行えるようにする唯一の現実的な方法は、既存のシステム内で外国人向けに例外を設けることだ。
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翻訳=溝口慈子

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