高齢者の肺がん予防、禁煙よりも「早期発見」のほうが効果的

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オランダの研究チームによれば、高齢喫煙者の肺がんについては、「禁煙」よりも「早期発見」の方が、延命効果が高いようだ。肺がん治療の選択肢は最近増えているが、CTスキャンを受けて、できるだけ早く診断を下せば、その分だけ治療効果を得やすくなる。CTによる検診を実施することは、医療制度におけるコスト削減にもつながる。

米がん協会によると、肺がんは、米国ならびに世界全体でがんによる死因の断トツの1位だ(がん死亡全体の20%近くを占める)。乳がん、大腸がん、前立腺がんの3つを合わせた死亡者数よりも多い。

オランダ紙のアルゲメン・ダグブラッドは米国時間4月8日、60歳以上の喫煙者の場合は、禁煙プログラムよりもCTスキャンの方が高い延命効果を得られるという研究結果を報じている。

ロッテルダムにあるエラスムス大学付属医療センターのカレイン・ファン=デル=アールスト准教授は地元ラジオに対し、こう述べた。「肺がんは、禁煙プログラムへの参加を促すより、CTスキャンを用いて早期発見する方が、5倍から10倍も延命効果が高い。最大で10年間も長生きできる」

禁煙はいずれにしても有効で、若年層にはとくに効果的だが、高齢者の肺がん予防という点では、その効果には限界がある。60歳になると、彼らは「もはやリスク群とされる」とファン=デル=アールストは話す。従って、極めて重要になるのが、肺がんをできるだけ早期発見することだ。

早期に見つけられれば、最新の治療法を用いた医療介入によって成果を得られる確率が高くなる。初期段階で発見できれば、5年生存率は、他の部位にすでに転移していた場合の5倍になる。速やかに発見できれば、医療制度においても、長期的なコスト削減になることは言うまでもない。

研究チームがこの結論を導き出したのは、肺がんのリスクが高い(喫煙習慣のある)オランダ人男性1万3195人を対象にして、2015年末まで、最低10年以上の追跡を行った臨床試験からだ(論文は2020年1月、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌で発表)。低線量ボリュームCTによる検診を、受ける群と受けない対象群に無作為に割り当てた。その結果、CT検診を受けた集団の方が、受けなかった集団より、肺がんによる死亡率が有意に減っていたことが示された。

なお、女性の高リスク群2594人も追跡対象となったが、対象者数が男性を下回ったのは、同年齢層では女性喫煙者が男性より大幅に少なく、結果として対象女性も少なくなったためだ。CT検診が肺がん死亡率に与えた効果は、男性よりも女性の方が一貫して良好だったという。

エラスムス医療センターは、この研究を発表した後で、高リスク群を対象にした大規模な予備調査を実施した。具体的には、40万人に予備調査参加を呼びかけ、ファン=デル=アールストが実証プロジェクトの主任コーディネーターを務めた。

欧州では、ドイツ、スペイン、イタリア、フランスなどの国々もこれに続き、同様の実証プロジェクトを実施した。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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