サイエンス

2024.04.06 14:15

「分譲アパートの床下」からの発掘、イエス・キリストの墓をめぐる新精査

「パティオの墓」内。骨棺があり、石で封印されているのが見える。写真:ウィリアム・タラント、GE Inspection Technologies and Associated Producers, Ltd.

エルサレム南部の閑静な住宅街、「分譲アパートの床下」で発見されたとある遺跡。キリスト教の起源と古代ユダヤ教を研究する著名な学者で歴史家、ノースカロライナ大学シャーロット校教授 ジェームズ・テイバー博士は、これが「イエス一族の墓」と思われると発表した。

キリストの遺骨とイエス一族の墓、骨棺に刻まれた名が語る「真実」とは に続き、テイバー博士の「発見」とその後の論争について見ていこう。


深さ約2メートル、9つの窪み─

庭の墳墓が最初に発見されてからわずか1年後、集合住宅の建設工事に伴うダイナマイトの爆発によって、すでに露出していた庭の墳墓のわずか60メートル北にある、古代の墳墓が新たに露出した。再度、アモス・クロネルがその墓の調査に呼ばれた。

パティオの墓(または「復活の墓」)と名づけられた集合住宅の中庭。庭の墓と同様、現在は立ち入り禁止になっている。

パティオの墓(または「復活の墓」)と名づけられた集合住宅の中庭。庭の墓と同様、現在は立ち入り禁止になっている。

クロネルは天井の割れ目からしか墓に入ることができなかった。古代の正方形の入り口は閉ざされ、ストッパーの役目を果たした大きな石で堅く封印されていたのだ。クロネルが最初に見たのは、3.5メートル×3.5メートルの、岩で削られた正方形の1つの部屋だった。

部屋の3つの側面に沿って、それぞれ3つずつ、深さ2メートルほどの9つの彫りの深い切妻の窪みがあった。それぞれの壁龕は前面が塞ぎ石で塞がれていた。クロネルは壁龕の中に骸骨があり、そのうちの4つの壁龕の中に、まだ骨棺に納められていない一次埋葬の遺骨があることを確認した。また、床の3カ所には調理用の鍋が置かれていた。

クロネルには墓を調べる時間が十分に与えられなかった。やがてクロネルは、墓の神聖さを守ろうとする超正統派のユダヤ人たちに抗議され、そこから立ち去らざるを得なくなってしまったからだ。

しかしその後クロネルは、1つの小さな骨棺を調査することに成功した。それは、子どもの遺骨にふさわしい、碑文のない、装飾の施された骨棺だった。クロネルはそれをロックフェラー本部にあるIAA当局に預けたという(この骨棺は現在、イスラエル国の所蔵品となっている)。 

抗議行動があったにもかかわらず、クロネルとIAAはこの墳墓を調査する決意を固めた。クロネルは別の予定のために出国しなければならなかったが、IAAの2人の考古学者、ジョセフ・ガト(故人)とシュロモ・グドヴィッチに調査の続行を託した。

そして彼らは現場に戻り、窪みから塞ぎ石を取り除き、中にある合計7つの骨棺を調べ、写真を撮って位置を記録することができたのだ。

1つを除くすべての骨棺に装飾が施され、2つにはギリシャ語の碑文が確認された。考古学者らは墳墓の場所に数日間滞在し、骨棺を龕から取り出し、さらに調べるために蓋を開けた。

しかし、それらの骨棺をIAAロックフェラー本部に運ぶため、墓の天井から吊り上げる準備をしていたところ、超正統派ユダヤ人の抗議グループによって再び作業が阻止された。そして残りの7つの骨棺は、すべて元の位置ではないものの窪みに戻されてしまい、今日に至っている。

納骨堂を含む墓のニッチの1つを遠隔カメラで撮影したもの。この空間内でカメラを操作するのは、控えめに言っても困難である。 写真:ウィリアム・タラント、GE Inspection Technologies and Associated Producers, Ltd.

骨棺を含む墓の割れ目の1つを遠隔カメラで撮影したもの。この空間内でカメラを操作するのは、控えめに言っても困難である。 写真:ウィリアム・タラント、GE Inspection Technologies and Associated Producers, Ltd.

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翻訳=伏見比那子 編集=石井節子

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