サイエンス

2024.04.06 14:15

「分譲アパートの床下」からの発掘、イエス・キリストの墓をめぐる新精査

神の名「ヤハウェ」の文字がギリシア語で─


ギリシャ語が使われていることは、必ずしも特別ではない。しかし、翻訳されたこの文章はまるで墓碑銘のように読むことができ、この状況下では極めて異例であった。さらに珍しいことに、当時のユダヤ人家族の墓であることが明らかな1世紀の骨棺に、神の名である「ヤハウェ」という文字がギリシア語で書かれており、よみがえりや復活を表す言葉(「神のもとによみがえれ」、あるいは「天によみがえれ」)が使われていたのだ。

第6骨棺は、もともと(クロネルが探索した時には)墓の入り口に最も近い位置にあり、おそらくもっとも興味深い印があった。その前面には、尾、ヒレ、ウロコを含む魚の像と、口から大きな頭を出した棒のような人間の姿らしきものが描かれていたのだ。

さらに上部の縁に沿って、魚の形をした小さな絵が連なっており、左端には鐘の形をした円があり、その中に十字架が描かれていた。右端には、鱗に覆われた魚の胴体と尾と思われる絵が描かれていたが、その下部だけが逆さまに描かれている。魚の頭の中には、「ヨナ」という名前と解釈されるものが刻まれており、この発見により、第6骨棺は「ヨナの骨棺」として広く知られるようになったのだ。

「天によみがえれ」、魚の像、その「口」から現れる人間の像、そして「ヨナ」という名前。これらの発見は一体、何を意味するのだろうか?

「ヨナ納骨堂」で発見された刻まれた画像。チームエンジニアが考案した、ロボットアームカメラシステムによって撮影可能となった。 写真:ウィリアム・タラント、GE Inspection Technologies and Associated Producers, Ltd.

「ヨナの骨棺」で発見された刻まれた画像。チームエンジニアが考案した、ロボットアームカメラシステムによって撮影可能となった。 写真:ウィリアム・タラント、GE Inspection Technologies and Associated Producers, Ltd.

ヨナの碑文が強調された、第6納骨堂のクローズアップ写真。 写真:ウィリアム・タラント、GE Inspection Technologies and Associated Producers, Ltd.

ヨナの碑文が強調された、第6骨棺のクローズアップ写真。 写真:ウィリアム・タラント、GE Inspection Technologies and Associated Producers, Ltd.

「キリスト教徒に関連する、最古の考古学的発見物」

第5骨棺と第6骨棺の発見は、おそらく墓から発見された中で最もセンセーショナルで物議をかもすものとなった。

調査チームの解釈によれば、それらが1世紀のユダヤ教の納骨棺に描かれた魚や動物の像(1世紀のユダヤ教では禁止されていたはずのもの)である可能性があるだけでなく、そのイメージが紀元後3〜4世紀のローマの地下墓地にあるキリスト教の墓に見られるものと似ていたからである。

テイバーらによれば、これらはイエスの初期の信者、つまりキリスト教徒に関連する最古の考古学的発見物である可能性があるという。

テイバーの解釈は、言うまでもなく学者たちの間で大激論を巻き起こしている。その中には、この墓が発見されたとき、最初に調査を行ったIAAの考古学者であるクロネル自身の意見も含まれている。

クロネルは現在、ヨナの骨棺に描かれた魚の像を、魚ではなく葬送用の棺あるいはアンフォラであると解釈しており(同じような解釈をする学者は多くいる)、またギリシャ語の碑文はよみがえりや復活を意味するものではなく、実際には墓の骨を乱すことを禁じた警告と解釈すべきであると述べている。  
 
こうした論争があるにせよ、パティオの墓の図像が特異であることや庭園の墳墓に近接していることは、別のことをも物語る可能性があるとテイバーは言う。

これらは、庭の墓が本当にイエスの家族の墓であり、イエス自身、イエスの母マリア、マグダラのマリア(聖書の正典でも他の古代の記述においてもイエスの側近とされている)、そしてイエスの息子である子どもの遺体が最後に安置された場所であることを示す、もう一つの指標かもしれない。ヨセフの息子でイエスの兄弟である、ヤコブについてもである。
 
庭の墓(「イエスの家族」)、パティオの墓(「復活」)、そしてヤコブの納骨棺と、すべてのピースが組み合わされたとき、その発見と解釈は、庭の墓がイエスの墓であることを 鮮やかに立証することになるだろう。


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本稿は「Popular Archaeology」で発表された、Dan McLerranによる「The Jesus Family Tomb」の翻訳である(画像提供:Jeff Jacobs, Pixabay)。

翻訳=伏見比那子 編集=石井節子

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