欧州

2024.03.12 15:00

ウクライナ軍、激戦の東部戦線でロシアをしのぐドローン攻撃の可能性

安井克至
だが、規模の大きなロシアのドローン産業が戦闘に投入できる状態のドローンを必要とされるときに前線に届けるという、重要な役割を果たしているかは定かではない。ウクライナのドローン産業界はまさにそうしており、そのためウクライナ軍は一貫してロシア軍より多くのFPVを出撃させている。

問題の1つは、ロシア製ドローンの多くが出来が悪く、信頼性に欠けることだ。ロシアのある従軍記者は、ロシア製FPVで最高モデルである「ピラニア」や「グール」は、私財を投じて愛好家が作ったものだと指摘した。これらのモデルは、ウクライナ軍が運用する米国製M1エイブラムス戦車2両を攻撃し、動けなくさせたかもしれない。

だが、政府資金で賄われ、軍事請負業者によって製造されたドローンは「低品質」でウクライナ軍の電波妨害に弱く「接近時にひっくり返る」傾向があるとこの記者は主張。ドローン大手を腐敗させたのは「縁故主義とロビー活動」だと非難した。

ロシアがウクライナより多くのドローンを製造していても、使えるものでなければ意味がない。ロシア大統領府が国営のドローン企業を改革しない限り、そして改革するまで、ウクライナ軍はより多くの優れたFPVを配備し続けるかもしれない。

航続距離約3.2km、重量約900gのFPVは、射程24km、重量約45kgの砲弾に完全に取って代わることはできない。だがドローンは大砲の在庫が少ない場合の効果のある一時しのぎの兵器だ。

ウクライナの大砲の在庫は、米議会のロシア寄りの共和党員が昨年10月以来、対ウクライナ支援を妨害しているために、非常に少なくなっていることを忘れてはいけない。

ウクライナの大砲危機は終わりつつある。チェコはウクライナ向けの100万発の砲弾の購入を仲介した。購入の大半が欧州のコンソーシアムによるもので、第1弾がウクライナに向かっているはずだ。また、米共和党員が譲歩し、さらに100万発の砲弾の購入にあてられるかもしれない米国の追加支援法案を承認する可能性もある。

自由なウクライナを支持する人々にとってうれしいのは、砲弾が追加生産される見込みであることだ。ウクライナ軍は砲弾不足の影響を抑制するためにFPVドローンの生産を増強し、ロシア軍よりもFPVで優位に立った。

だが砲弾不足が解消されても、ウクライナ国内の工房ではなお毎月何万機もの信頼性の高いFPVドローンが製造されるだろう。こうして、ウクライナの一時しのぎのドローンは余剰となり、火力面でかなり優位に立つ可能性がある。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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