パトリオットはこれまで、超音速の地対地ミサイルであるイスカンデルを繰り返し撃墜してきた。ただ、それはある地点に配備されて警戒している間に限られ、車列を組んである発射地点から別の発射地点に移動中のことではなかった。
攻撃に遭ったパトリオット運用部隊は今回、移動中に対空掩護を受けていなかったようだが、理由は不明だ。ウクライナ空軍は都市や地上部隊、さらには自らを守るために戦力を引き延ばされ、それぞれの防護があまりに薄くなっているのかもしれない。
実際、ウクライナ側の地上部隊の対空掩護はほころびが目立ってきている。ロシア側は先週、ウクライナ軍の高機動ロケット砲システム(HIMARS)も
初めて撃破したと報告していた。これもやはりドローンで位置を突き止め、イスカンデルを撃ち込んでいた。
ウクライナ軍の防空部隊はパトリオットの発射機2基と、おそらくその熟練した要員も失う前の時点で、すでに過度の拡張を強いられていた。装備、そしておそらく人員も減った現在は、それに拍車がかかっているだろう。また、失った発射機の補充にも苦慮しそうだ。
というのもパトリオットは、ミサイルについてはドイツなどでライセンス生産も行われているものの、発射機などのハードウェアは米国のレイセオン社が唯一の製造企業だからだ。ウクライナもしくはその支援国は、失われた発射機2基の代替分をレイセオンに発注することはできるだろうが、調達には数年とまではいかなくとも数カ月かかる可能性がある。取得には数百万ドルかかるが、ウクライナ政府はそのための予算を計上していないとみられる。
ウクライナはパトリオットの発射機やミサイルも無償供与されることが多かった。ドイツやオランダ、あるいはパトリオットを運用するほかの欧州の国がウクライナに発射機を新たに譲渡するのは可能かもしれないが、本来、最も手っ取り早いのは生産国である米国が供与することだ。
だが、米国によるウクライナへの追加援助は昨年10月以来、ロシアに融和的な共和党議員らの手で阻まれている。ウクライナはパトリオットの発射機に関しても、失った分を簡単には補充できない状況にある。
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forbes.com 原文)