米科学誌サイエンス・アドバンシズに21日発表した研究論文で、英ケンブリッジ大学の研究者らのチームは、新型コロナウイルスに感染した人で後遺症が残る人と残らない人がいる原因を突き止めるため、コロナ後遺症の患者を2年半にわたって追跡調査した。
ヒトがコロナウイルスに感染すると、「インターフェロンγ(IFN-γ)」と呼ばれる炎症性たんぱく質(サイトカイン)が分泌される。これは、ウイルスを撃退するために体内で起こる自然な反応の一部だ。
このたんぱく質の分泌は通常は患者が回復すると止まるが、調査したコロナ後遺症の患者は最初の感染から最長で31カ月にわたってインターフェロンγの値が高かった。研究チームは、インターフェロンγが多くつくられ続けることがコロナ後遺症の原因になっている可能性があるとみている。
ワクチンに改善効果
調査期間中に、6割超の患者は少なくとも一部の症状が軽減していた。また、感染後にワクチン接種を受けた患者はコロナ後遺症とインターフェロンγの産生量が有意に減少しており、ワクチンにはコロナ後遺症を「改善」する効果があることが示唆された。米疾病対策センター(CDC)によると、コロナ後遺症では息切れ、嗅覚・味覚の障害、頭の中にもやがかかったようになる「ブレインフォグ」、胸の痛みといった症状が数週間、場合によっては数年間続く。
現在は対症療法に限られ、根本的な治療はない。論文の共同執筆者であるケンブリッジ治療免疫学・感染症研究所(CITIID)のベンジャミン・クリシュナ研究員は、今回の研究成果によって「治療薬の開発に向けた道が開かれることを期待している」と述べている。
2023年の研究では、コロナ後遺症の患者は世界全体で少なくとも6500万人にのぼると推定されている。CDCは、2023年6月時点で米国の成人の約6%がコロナ後遺症を患っていると見積もっている。