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2023.07.23 08:30

新型コロナ後遺症、主因は「迷走神経」の損傷か 研究結果

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新型コロナウイルスに感染した後、罹患後症状(後遺症、ロングコビットとも呼ばれる)に悩む人は、2022年の報告ですでに6500万人を超えている。後遺症の特定や診断は難しく、感染後にそれらが現れる確率は、実際には考えられている以上に高い可能性がある。

後遺症の症状には、倦怠感、呼吸困難、ブレインフォグ(思考力・集中力の低下や記憶障害など)といったものがある。生活の質を著しく損なうことにつながるこれらの症状の多くについて、新たな研究結果で指摘されているのは「迷走神経の損傷」に関連性があるということだ。

心臓や肺、消化管など、主要な臓器のすべてに広く分布する迷走神経は、体内の「情報スーパーハイウェイ」とも言える。そのため、この神経が損傷を受ければ、呼吸や消化、あるいは単に体が機能するということにも、混乱が生じることになる。

後遺症がある300人以上を対象に、スペインのジャーマンズ・トリアス・イ・プホル大学病院の感染症の専門医らが行った研究の結果によると、感染時の症状が軽度から中程度だった人のうち、迷走神経の損傷に関連がある1つ以上の症状を訴える人は、3分の2以上にのぼっていた。

感染していない人、急性感染症が完全に回復した人に比べ、後遺症がある人により多くみられたのは「長引く咳、話し方の変化(発声障害)、ものが飲み込みにくい(嚥下障害)、心拍数の増加(頻脈)や心拍数の変動幅の拡大、消化管障害、めまい、認知障害」といった症状だ。

研究チームはそのほか、超音波画像の分析を行い、迷走神経そのものについても詳しく調べた。その結果、後遺症がある人の20%には、首から胸部に伸びる迷走神経の全体に、著しい肥厚が見られたという。

神経の肥厚は多くの場合、炎症に起因するものだ。研究者らは、迷走神経にこうした構造的な変化が起きていることの要因には、ウイルス感染という直接的なものと、免疫の活性化という間接的なものがあると推測している。

また、感染していない人、急性感染症から完全に回復した人と比べると、後遺症がある人はより多く(47%)に、横隔膜の平坦化が見られた。肺の下にあり、収縮によって呼吸をコントロールするこの筋肉の平坦化は、胸腔内の大幅な圧力の低下と関連していることが多く、息切れやめまいなどの症状の原因になっていると考えられる。

一方、意外なことに、超音波画像から見る限り、肺のその他の部分は正常な状態にあることがわかったという。これは、後遺症としての呼吸器症状は「肺が受けた直接的な損傷によるものではない」ことを示唆している。

つまり、迷走神経が損傷を受けたことによって横隔膜への信号伝達が阻害され、そのため横隔膜の収縮と拡張が十分に行われなくなっている可能性があると考えられる。

多くの臓器は、迷走神経に依存している。そのためこの神経が受ける損傷は、体内のその他の重要なシステムに影響を及ぼし得る。この研究結果が示唆するのは、後遺症の治療において標的とすべきものは、迷走神経だということになる。

迷走神経に刺激を与えることが全身に起きる炎症の抑制につながるとみられることは、すでに以前から報告されている。だが、この神経が受けた損傷が長期的にどのような影響をもたらすかについては、ほとんど明らかにされていない。

新型コロナウイルスへの感染が迷走神経に与える影響を明らかにすることができれば、後遺症が体に及ぼす影響についての新たな知見が得られるかもしれない。

forbes.com 原文

編集=木内涼子

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