この概念実証装置を手掛けたのは、同大マッケルビー工学部のラジャン・チャクラバーティ准教授(エネルギー・環境・化学工学)とジョセフ・プトゥセリー博士研究員、医学部のジョン・シリト教授(神経学)とカーラ・ユーディ准教授(精神医学)らのチーム。研究結果と技術の詳細は、英オンライン科学誌ネイチャー・コミュニケーションズで7月10日に発表された。
この装置は、新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザウイルスやRSウイルスなど、呼吸器感染症を引き起こすさまざまなウイルスのエアロゾルを検出できる点で画期的だ。商用化されれば、病院や福祉施設、学校、共同生活施設といった公共施設での活用が見込める。
シリト教授は大学の発表資料の中で、「室内がどれだけ安全かを知るすべは今のところない」と指摘。「100人が集まる部屋に滞在する機会があったとして、5日後にならないと病気にかかったかどうか分からないなんて嫌だろう。この装置の狙いは、感染性のある生きたウイルスが空気中に存在するかどうかを5分ごとに、つまりほぼリアルタイムで知ることができるというものだ」と説明した。
研究チームは、バイオセンシング技術の専門知識と、空気の汚染度を測定する装置の設計ノウハウを組み合わせ、湿式サイクロン(ウェットサイクロン)と呼ばれる技術を応用したエアーサンプラー(空中浮遊菌測定機器)を作製した。サンプラーに超高速で吸い込まれた空気は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を認識するナノボディを含んだ液体と遠心力で混合され、内壁面に表面渦を形成してウイルスのエアロゾルを捕集する。この液体をポンプで回収し、バイオセンサーを用いて電気化学的手法でウイルスを検出する。
極めて高い流速と毎分約1000リットルの流量を実現し、現在市販されているサンプラーと比較してはるかに大量の空気サンプルを5分間で採取できる。また、幅約30センチ、高さ約25センチとコンパクトなサイズで、ウイルスが検出されるとライトが点灯し、部屋の空気の流れや循環を増やすよう警告する。