健康

2023.07.17 15:00

肥満度指数高めでも死亡リスクは高くないとの研究結果

安井克至

Shutterstock

研究者たちはかつて、肥満度を示す指数であるBMIが高い人は糖尿病や脳卒中、心血管疾患などの生活習慣病にかかるリスクがはるかに高いと主張してきた。その結果、肥満の人の寿命は短くなる。だが、それは真実ではないとする研究論文が科学誌『PLOS One』に掲載された。BMIが30を超えていても、それだけで死亡リスクが高まることはないと指摘している。

「BMIと死亡率の関連性に関する疫学的証拠は一貫しておらず、特に太り過ぎや肥満の人に関しては、原因を問わない死亡率のリスクが同等か低いことを示す分析もある」と、この論文著者である米ラトガース大学のAayush VisariaとSoko Setoguchiは書いている。

「加えて、これまでの米国の研究の大半は1960年代から1990年代までのデータを用いており、主に非ヒスパニック系白人の男女を対象としてきた。それとは対照的に、現代の米国人口のBMI分布は大きく異なっており、平均BMIは1970年代以降、男女とも2以上上昇している」「また全体的にも、そして肥満の人の間でも平均寿命は10年以上延びている」と指摘している。

米国市民のBMIと全死因死亡率のつながりに関連するこれらのデータの矛盾をさらに調査するために、著者らは1999年から2018年の国民健康聞き取り調査(NHIS)の成人55万4332人のデータを分析。特に、異なる人種・民族グループに属する65歳以上の男女のデータの分析に焦点を当てた。平均BMIは27.5だった。参加者は心血管疾患やがん、喘息、腎臓病、糖尿病の既往歴を自己申告していた。

「分析の結果、太り過ぎの範囲に入るBMIでは死亡リスクに有意差はないことが一貫して示された。若年成人では、BMIが25~27.4の人の死亡リスクは上昇しなかったが、BMI27.5~29.9の人では20%近く高かった」という。

著者らはさらに、太り過ぎの人やBMIが高めの人の死亡リスクが、BMIが「正常」の人と同程度であるのにはさまざまな理由が考えられると指摘。その1つは、疾患や併存疾患を持たない太り過ぎの人は代謝的に健康で、BMIが正常範囲内の人よりも除脂肪体重(筋肉や骨、内臓などの総重量)が多い「より好ましい」体組成をしている可能性があることだ。

また、BMIだけでは腹部にどれだけ脂肪がついているかは判断できない。「高血圧や糖尿病などの疾患を発症した痩せ型の人は、より侵攻性の疾患であったり、治りにくい疾患であったりする可能性がある。一方、そのような疾患を発症した太り過ぎや肥満の人は、減量によって疾患を管理することができたり、あるいは回復したりできるかもしれない」と著者らは書いている。

「米国におけるこれまでの研究の制限の1つは、人種的多様性と変化する人口動態の代表性の欠如だ。我々の研究には10万人を超えるマイノリティの成人が含まれており、非ヒスパニック系白人成人と比較して、太り過ぎおよび肥満のBMIでより低い死亡リスクを示した」と付け加えている。

だがこの研究には制限がある。第一に、NHISデータの参加者はBMIを自己申告していたため、誤分類が生じた可能性がある。ただし、研究者らによると、これまで行われてきた研究もBMIを自己申告した参加者のデータを使用していたという。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事