コロナ後遺症の倦怠感、末期がん患者よりも深刻

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コロナ後遺症に罹患した高齢者以外の成人が抱える倦怠感は、がんに関連する貧血や、進行した肺がん、炎症性腸疾患、腎臓病の患者を上回ることがあるとする研究結果が、医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)のオープンアクセスジャーナルである「BMJオープン」に6月7日付で発表された

実際、この倦怠感は非常に重篤で、研究対象となった患者のうち半数以上が、過去1カ月に1日以上、後遺症により仕事を休んだと回答し、過去1カ月のうち働くことができない日数が20~28日に達したと答えた患者も20.3%に達した。

この研究は、英国のイングランドおよびウェールズにあるコロナ後遺症を診察する31の医院に治療のため来院した、3754人の患者を対象としている。これらの患者は、英国の国民医療サービス(NHS)が後遺症患者向けに策定したデジタルプログラム「Living With Covid Recovery」に参加し、患者用のアプリに定期的にアクセスしていた人たちだ。

研究に参加した患者の大半は、専門的な職業に就く社会人で、平均年齢は47.7歳だった。また対象者のうち71%を女性が占め、全体の87%は白人だった。

参加者はそれぞれ、アンケートへの記入を求められた。回答内容には、アプリ上でのコロナ後遺症に関連する倦怠感についての自己評価値が含まれていたほか、患者のメンタルヘルスの状況を確認し、うつ病や不安症と診断される状態にあるか否かもチェックされた。

こうして集められたデータを分析した結果、コロナ後遺症患者を苦しめる身体の衰弱をともなう倦怠感では、脳卒中の後遺症や、重症の腎臓病といった慢性疾患を抱える患者と比べても、身体機能の喪失が著しいことが判明した。これに加えて、コロナ後遺症患者では、健康に関する生活の質(QOL)スコアが、ステージ4の肺がん患者よりも低くなっていた。

「コロナ後遺症を訴え、治療を求める患者のうち、主に労働年齢の成人で教育水準が高い白人女性の間で、特に機能障害と健康に関するQOLスコアの低下が際立っている」と研究チームは論じている。「この機能障害は、主に重度の疲労によって引き起こされており、仕事を行なったり、自分以外の人の面倒を見たりする能力に大きな影響を与えている」
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翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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