ヘルスケア

2023.06.17 10:30

コロナ後遺症の倦怠感、末期がん患者よりも深刻

さらに悪いことに、現時点では、慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)の症状を訴えるコロナ後遺症患者が受診できる、エビデンスに基づいた臨床的アプローチは存在しない。新型コロナウイルスに感染した人のうち、最終的にコロナ後遺症を患う人の割合が17%を超えていることを考えると、これらの研究結果は特に憂慮すべきものだ。

研究論文の共同執筆者で、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の疫学・ヘルスケア研究所に所属するヘンリー・グッドフェロー博士は、プレスリリースでこう述べている。「これらの患者にみられるコロナ後遺症の症状や影響に対する理解が深まり、NHSおよび政策立案者が、限られたリソースを適切に振り向ける後押しになるよう期待している。コロナ後遺症患者のニーズにより的確に応えられるよう、既存の医療サービスを調整し、新たなサービスを企画することが求められている」

ポストコロナ症候群(PCS)とも呼ばれるコロナ後遺症は、世界保健機関(WHO)の定義では、新型コロナウイルスに感染してから3カ月後になっても症状が続く、あるいは新たな症状が出現する状態で、なおかつ症状が2カ月以上持続し、他の理由によって説明できないケースと定められている。

2022年8月の時点で、全世界でコロナ後遺症として報告された患者の数は5億7700万人以上に達している。最も多い症状は倦怠感、ブレインフォグと呼ばれる頭がぼんやりする状態、息苦しさ、メンタルヘルス関連の症状、嗅覚の喪失などだ。

「特に憂慮すべきなのは、我々の研究対象となった患者では、労働年齢の女性が多くを占めていた点だ。この年齢層の女性は、医療やソーシャルケア、非公式なケアの分野で人員が逼迫した時期に、大きく貢献する人たちだ」と、研究チームは指摘している。

「ポストコロナ症候群が、心身の健康をむしばむ多因子疾患であることは明らかだ。こうした大規模な患者集団の回復と仕事への復帰を最大限実現するために、新型コロナウイルス感染症への感染後の評価サービスは、倦怠感の評価および治療に焦点を合わせることを検討すべきだ」

forbes.com 原文

翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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