人工甘味料アスパルテームを「発がん可能性物質」に分類へ、WHO

Getty Images

最も広く使われている人工甘味料の1つである「アスパルテーム」が、世界保健機関(WHO)によって「発がんの可能性がある」物質に分類される見通しになった。アスパルテームは食品安全当局などによって一定量以下なら摂取しても安全とされてきた一方、多く摂取するとがんの発症リスクが上昇する可能性があるとする研究結果も出ていた。

アスパルテームは「ダイエット・コーク」や「ダイエット・ペプシ」などの低カロリー飲料や、シュガーレスのガムなどさまざまな食品に使われている(いずれも現在、日本未発売)。カロリーは含まれるが、砂糖よりも200倍ほど甘いため使用量は少なくて済む。

ロイター通信によると、WHO傘下の国際がん研究機関(IARC)は7月14日にアスパルテームを「ヒトに対する発がん性をもつ可能性がある」物質のグループに含めることを決めた。関係者らの話としている。ヒトが安全に摂取できる量に関しては今回の判断では考慮されなかったが、WHOと国連食糧農業機関(FAO)の合同食品添加物専門家会議(JECFA)が別の報告書で判断を示す予定だという。

危険性示す研究結果

アスパルテームについて、JECFAは1981年、1日の許容摂取量(ADI)以内の使用は安全との見解を示していた。米食品医薬品局(FDA)はそれに先立つ1974年に卓上甘味料や一部食品の添加物としての使用を認可し、1996年には一般甘味料として承認している。

FDAはアスパルテームのADIを体重1キログラムあたり50ミリグラムとしており、欧州食品安全機関(EFSA)はそれよりやや少ない同40ミリグラムに設定している。FDAの推定よると、体重約60キログラムの人が毎日の食事に含まれる砂糖をすべてアスパルテームに置き換えても、摂取量は体重1キロあたり8〜9ミリグラムにすぎないという。またEFSAは、体重約60キログラムの人がダイエットソーダを飲んでADIに達するには、認められている最大量のアスパルテームが含有されている場合でも、1日12缶必要になると試算している。

一方、2022年に医学誌「PLOSメディシン」に発表された研究では、アスパルテームの大量摂取と乳がんや肥満症に関連したがんのリスク上昇との間に関連性があることがわかった。マウスを対象とした別の研究では、アスパルテームが不安と関連していることや影響が最大2世代にわたって残ることも確認された。

医学誌『ネイチャー・メディシン』に今年発表された研究では、ゼロカロリーの甘味料「エリスリトール」について、血栓や心臓発作など心血管疾患のリスクを高める可能性があることも明らかになっている。

アスパルテームなどの人工甘味料は長年、肥満症や糖尿病の患者にとっては砂糖の代用品として有用とされてきた。だがWHOは5月、人工や天然の非糖質系(ノンシュガー)甘味料について、体重管理の目的で使わないよう勧める新たな指針を出した。成人で2型糖尿病や心血管疾患の発症や死亡率上昇のリスクがあると警告した。

コカ・コーラやペプシコなどが加盟する米飲料業界団体アメリカン・ベバレッジは声明で、アスパルテームについてはFDAなど「複数の食品安全機関が引き続き安全としている」として、その安全性を擁護した。IARCは「食品安全機関ではない」とも指摘した。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事