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2024.02.23 15:00

「体内のゴミ処理システム」を治療に活かす方法を探すAI創薬企業VantAI

Getty Images

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私たちの生命を維持するための体内のプロセスでは、多くの老廃物が発生する。そのため私たちの細胞は、体内の不要なゴミを分解する「プロテインデグレーダー(タンパク質分解物質)」と呼ばれる特殊な化学物質群によって、自然なゴミ処理システムを進化させてきた。製薬会社の科学者たちは、このシステムをさまざまな病気の治療に利用する方法を模索している。

その方法の1つが、タンパク質に結合して他のタンパク質との相互作用を誘導する分子糊(Molecular glue)という化合物を用いるものだ。分子糊は、病気の原因となる物質の表面に結合して、プロテインデグレーダーを活性化させ、その物質が体から排出すべきものだと体内のシステムに認識させる。しかし、このコンセプトを実行に移すのは非常に困難だ。

VantAIの共同創業者でCEOのザッカリー・カーペンターは「単なる試行錯誤の結果として分子糊を発見することは不可能だ」とフォーブスに語った。カーペンターの会社は、生成AIを用いて、その発見のプロセスを迅速化し、治療薬として使用可能な分子糊を設計しようとしている。「このような物質を幾何学パズルのように扱うためには、画期的なAIのアプローチが必要です」と彼は述べている。

VantAIは2月13日、米国の製薬大手ブリストル・マイヤーズスクイブとの提携で、生成AIプラットフォームを用いて新たな分子糊を発見し、新薬の開発を行うと発表した。VantAIは、非公開の前払い金を受け取り、最大6億7400万ドル(約1010億円)を研究マイルストーンとして受け取るという。また、承認された医薬品の売上高からロイヤリティを受け取ることができる。

ブリストル・マイヤーズスクイブのロバート・プレンゲ最高研究責任者(CRO)は、フォーブスの取材に対してVantAIとの提携は「予測科学とテクノロジーを重視」する同社の取り組みの一環だと語った。彼によると、生成AIを活用することのメリットは、医薬品の開発コストを削減し、新たな治療法の発見を早めることにあるという。

VantAIは、現在36歳のカーペンターと、CTOを務めるルカ・ネフによって2019年に設立された。同社は、ビリオネアのビベック・ラマスワミが設立した製薬会社ロイバントの傘下で始動した企業だ。2人はマッキンゼーで創薬におけるAIとデータ分析の問題に取り組んでいたときに出会い、その専門知識を自分たちの会社に生かそうと決めたという。VantAIは2023年7月にロイバントから独立したが、現在も元親会社からの出資を受けている。

新しいタイプの分子糊やプロテインデグレーダーの設計に関する同社の技術スタックは、生成AIモデルに基づいて構築されているとネフは語った。「重要なのは、ChatGPTやMidjourneyのようなサービスの根底にあるものと同じパターン認識を、創薬プロセスに役立てることだ」と彼は語る。
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編集=上田裕資

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