EWシステムは、電磁スペクトルを利用し、欺瞞し、混乱させ、無線や航行機器、ミサイル、ドローン、照準システム、防空システムなどの機能を低下させる。戦争が長引く中でEWシステムの使用頻度は増えると予想され、より新しく先進的な技術が求められている。
こうした中、ウクライナのミハイロ・フェドロフ副首相兼デジタル転換相は先日、EWシステムの生産を民間に移行することで先進的なEW技術の国内増産を図るという新たな目標を示した。
現在、EW技術ではロシアが優位に立っている。事実、ロシアは2014年に初めてウクライナに侵攻した際も、EWシステムを巧みに部隊機動や砲撃に組み込んで大きな戦術的優位を獲得した。ウクライナ軍は通信妨害により防衛部隊の連携に失敗。一方、ロシア軍はウクライナ軍の電子認証を利用して、敵兵力が集まっている場所や砲兵部隊の位置を集中攻撃し、妨害電波によってウクライナのドローン部隊をほぼ無力化した。
その後もロシアのEWシステムは幾度も進化を重ね、強力で多汎用性の高いものとなっている。
2014年の紛争を教訓に、ウクライナ軍は今回のロシア侵攻に先んじてEWシステムを装備に取り入れた。機密扱いの技術なため具体的な種別は不明だが、オープンソースインテリジェンス(OSINT)サイトのOryxによると「NOTA」と「Bukovel-AD」という2つのウクライナ製EWシステムが用いられているとされる。いずれも対ドローン用で、NOTAシステムはさらに無線ネットワークを混乱させ、電気信号を妨害し、無線送信機を探知する。
英軍事週刊誌ジェーン・ディフェンス・ウィークリーは、この2つのシステムと併せ、無線信号の収集や選択的な妨害信号の発信が可能な「Mandat-B1E R-330UM」を紹介している。米国からの軍事支援物資にもEWシステムは含まれていたが、目録に詳細の記載はなかった。ウクライナ軍はこの他にもさまざまなシステムを有しているとみられ、ドローン対策や防空戦略で大いに活用されている。