例えば、営業改革であれば次のようなストーリーが考えられます。
「今、当社はかつてない危機に直面している。営業生産性が低く、皆がどんなに残業して働いても利益につながっていません。このままでは営業の若手がどんどん辞め、中堅がつぶれてしまう(危機)。この危機を乗り越えるのに、皆の力が必要です。皆で生産性を改善する施策を出し(友情)、皆さんが変革リーダーとして成長し、難しい施策も確実に実行していくこと(努力)で、営業生産性日本一の企業へと当社を生まれ変わらせたいのです(勝利)」
こうした変革のストーリーができたら、次は組織メンバー一人ひとりがこのストーリーを自分事にし、腹落ちするプロセスが重要になります。これを「カスケーディング」と呼びます。部署ごとや、年代をそろえたメンバーでワークショップや研修を行い、「自分にとっては何故変革が必要なのか」というストーリーに転換していきます。
先のストーリーであれば、「私は毎日17時に仕事を終わらせ、夜は自己研鑽をする時間にしたい。だから営業生産性の変革で、自分の生産性を上げたい」とか、「私は生産性向上のアイデアやスキルを他の人達から吸収して、もっと営業力を上げたい」といったように、個々人が何故変革に関わるかという具体的な理由を作っていくのです。
「変革のロールモデル」は経営陣
二つ目の鍵である「変革のロールモデル」は、経営陣です。マネージャークラスがそれを参考にしながら新しい動き方を習得し、社員全員の手本になるように動いていき、変革のすそ野を広げていくという、組織的なロールモデリングが必要になります。
図4:Train the trainers モデルで組織的なロールモデルを作る
営業生産性を改善する変革をしているのであれば、生産性改善につながるような動き方を、トップが矛盾なく続ける必要があります。残業をやめ、会社の価値向上につながらない資料はつくらない、つくらせない。
前回の記事でも書いたように、CRMを社員に浸透させたければ、自分自身がCRMを最も使い、意思決定に使わなくてはなりません。経費削減変革をしているなら、自身が経費削減を徹底的にやる必要があるでしょう。
経営陣の皆さんは、自分の一挙手一投足を社員が見て、それが変革の動きになっていくのだという認識で、動く必要があります。