溶岩が大気中から水中に移動すると、温度が1000度超から数百度にまで急激に低下するのにともない、溶岩の粘性が低い状態から高い状態へと激変し、すみやかに固まって急傾斜した岩壁を形成する。ゆくゆくは、固まった溶岩に亀裂が入って壊れると、岩塊全体が崩れ落ち、次に発生する溶岩流によって埋もれてしまう。これが火星でも起きた可能性が高い。
オリンポス山から北西に1500kmあまりの距離に位置するアルバ火山の北面にも、同じような地形がある。これも、広大な火星の海という説を裏づけている。この海は、オリンポス山が地質構造力によって押し上げられた可能性が高いため、必ずしも現在の急斜面の高さほどの深さがあったとは限らない。
NASAの火星探査車パーシビアランスが着陸したジェゼロクレーターの堆積物といった他の地質学的証拠に基づくと、火星には38億~36億年前まで、大量の水が存在していた。堆積物の連続性から、ジェゼロクレーター内には長期にわたって古代の湖が存在していたことが示されている。その後、火星の気候がはるかに極端化し、突発的な洪水によって引き起こされた泥流が、三角州に大きな石を堆積させた。湖が干上がると、風で地形が浸食された結果、火星は今日のような乾燥した寒冷な砂漠となった。このような気候の転換が起きた原因については、まだ明らかになっていない。
この研究をまとめた論文「A giant volcanic island in an early Martian Ocean?」は、学術誌Earth and Planetary Science Lettersに掲載された。
(forbes.com 原文)