宇宙

2024.01.16 15:00

NASA探査車が撮影した「火星の1日間」動画

安井克至

NASAの火星探査車キュリオシティが撮影したセルフィー画像(NASA/JPL-CALTECH/MSSS)

火星マニアたちは、いつか宇宙飛行士がその赤い惑星に着陸し、しばらく滞在する日を夢見ている。それまでの間、人類によるロボットの使者が火星を見る私たちの目となる。火星へ実際に訪れることは(まだ)できないが、そこでの1日がどのようなものになるかは、NASAの火星探査車キュリオシティの撮影した驚くべき動画で知ることができる。

NASAは、昨年末に火星の夜明けから日没までの動画を公開した。撮影は11月8日に、キュリオシティが太陽結合(solar conjunction)のために停車していたときとなる。太陽結合では、太陽が地球と火星の間にくることにより地球との通信が著しく困難になる。NASAのチームは、通信障害を回避しようと無線通信を中断するため、その間は火星にある機器にとって静かな時間となる。

太陽結合に先立ってチームは、危険回避カメラを使って12時間、写真撮影をするようキュリオシティに命令を送った。その目的は、ちりを巻き上げる旋風(ダストデビル)や雲の活動を捉えることだ。それらの気象現象は実際には起きなかったが、探査車は火星のよく晴れた1日をフルで記録することができた。キュリオシティにとって初めてのこととなる。

NASAは2本の動画を公開している。1つは前面の危険回避カメラ、もう1つは後方の危険回避カメラの映像だ。モノクロ映像は、忘れがたい地形と探査車の影が火星表面を日時計のように動いていく様子を映し出している。キュリオシティは、ゲール・クレーターの中心にある大きな山、シャープ山の山腹を探索している。

NASA

NASA/JPL-CaltechAS

前面の危険回避カメラの動画では、画面に白い点が散乱する瞬間がある。これはカメラの露光時間によるものだ。「昼間、前面の危険回避カメラの自動露光アルゴリズムは、露光時間を約1/3秒に設定します」とNASAが声明で説明した。「日が暮れると、露光時間は1分以上になり『ホットピクセル』と呼ばれる典型的なセンサーノイズが発生し、画像を白い雪が横切るように見えます」

NASA
NASA/JPL-Caltech

後方の危険回避カメラの映像には、もっと非現実的な場面がある。小さな黒い物体が、左側に現れてすぐに消える。UFOではない。宇宙線がカメラセンサーに衝突した結果作られた人工物だ。「同様に、動画の最後に見られる明るい閃光やその他のノイズは、探査車の電力系統の熱が危険回避カメラ画像センサーに影響を与えた結果です」とNASAは説明する。

NASAは斑点がちりばめられた画像についても説明した。それは、火星のちりが10年以上にわたってレンズに与えたものだ。キュリオシティは2012年、ゲールクレーターが過去に微生物の生命を育むことができたかどうかを調べるために火星にやってきた。この長寿命の探査車は、火星の表面を移動し続け、太古の湖や有機分子の証拠を含む貴重な科学データを地球に送ってきた。

キュリオシティの目的は単なるデータ収集にとどまらない。それは将来、人間が定住することを考えている世界への窓だ。あなたが探査車のに乗って火星の表面に立ち、影が地形を横切るのを見ているところを想像してほしい。そこには木もなく、鳥も飛ばず、空を埋め尽くすふわふわした雲もない。あなたは火星への移住を考え直すかもしれないし、親しみがあると同時に奇妙なこの遠方の惑星に魅せられるかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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