人はなぜ「嘘をつく」のか? 嘘の種類と心理的影響を研究結果から解説

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相手を傷つけないために嘘をつく「ホワイトな嘘」。悪質な「ブラックな嘘」。その中間にある「グレーな嘘」。あるいは、取るに足らない「ちょっとした嘘」。どんな嘘であれ、人は誰でも一生のあいだに、なんらかのかたちで嘘をついてしまうものだ。

道徳に反しても、自分の評判や人間関係に害をなす可能性があっても、嘘はそこらじゅうで生まれ続けている。ばれたり、罰を受けたりすることがない限り、嘘の直接的な結果は、大抵かなり小さなものだ。それでも、嘘に伴う心理的な負担が生じることはある。

「正直さ」と「正直な手段では達成し得ない利益について、注意深く考えた上での欺瞞」とのあいだには、微妙なバランスが存在する。潜在的な利益が、潜在的な損失を上回るとき、人はしばしば、嘘をつきたいという誘惑に駆られる。そうして生まれる嘘には、いくつかのタイプがある。

嘘の裏にある動機を分析する

2018年の研究では、受益者と動機というふたつの要素をもとに、嘘の背後にある心理的プロセスが説明されている。嘘をつくという決断は、受益者、つまり、その嘘で得をする人によって影響される。

嘘の背後にある動機は、望む結果を得るためということもあれば、望まない結果を避けるためということもある。研究者らは、人が不誠実になる理由に基づいて、6タイプの嘘を提示した。

1. 利益を得るための自己志向的な嘘:このタイプの嘘は、自分が良い結果や利益を得ることを目的にしている。例えば、拾ったお金を自分のものだと主張する、など。

2. 損失を避けるための自己志向的な嘘:このタイプの嘘は、自分にとって悪い結果や損失を避けることを目的にしている。例えば、駐車する時に他人の車にぶつけたのに、それを否定する、など。

3. 他者の利益を得るための他者志向的な嘘:このタイプの嘘は、他者にとって良い結果や利益が得られることを目的としている。例えば、「仮病で欠勤している同僚」を擁護するために上司に嘘をつく、など。

4. 他者の損失を避けるための他者志向的な嘘:このタイプの嘘は、他者を損失や悪い結果から守ることを目的にしている。例えば、両親に心配させないように「自分は元気でやっている」と嘘をつく、など。

5. 共に利益を得るための互恵的な嘘:このタイプの嘘は、嘘をつく本人だけでなく他者も利益を得ることを目的としている。例えば、良い成績を取るためにグループプロジェクトの結果を偽る、など。

6. 共に損失を避けるための互恵的な嘘:このタイプの嘘は、自分と他者の損失を避けることを目的としている。例えば、重要な締め切りを守れなかった際に、チームマネージャーが職場の上司に対し、タスクを完了できなかったチームが責められたり個人で責任を引き受けることにならないように、技術的な問題が原因だったと偽りの説明する、など。

なぜ嘘をつくことを選んだかという動機に関係なく、嘘をついたという心理的負担は意識に重くのしかかる。嘘がばれずに済んだとしても、嘘をつくというプロセスそのものが、本質的にストレスの大きい行為になる可能性があるのだ。以下では、そうした研究結果について見ていこう。
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翻訳=ガリレオ

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