サイエンス

2024.01.06 08:00

やっぱりお金はあったほうがいい? 「幸福感」のもとになる3つの社会的比較

日下部博一

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学術誌『Frontiers In Psychology』で発表された最新の研究で、収入と主観的幸福感の関係が検証されている。主観的幸福感は、生活に対する満足度の高さと、ポジティブまたはネガティブな感情を抱く頻度をもとに測られる。その結果は、予想通りと言えるが、収入が高い人ほど幸福感が大きいのに対し、収入の低い人のグループでは幸福感が小さい傾向があることがわかった。

収入が低いと、生活必需品の入手、適切な生活条件、医療、娯楽、経済的な安定といったものが制限され、それが幸福感に影響を及ぼす。だが、研究チームによれば、それだけでは、幸福感の社会経済的格差を完全には説明できないという。

この研究では、そうした幸福感の格差が、3種類の社会的比較のプロセスに起因する可能性があることも示されている。それらのプロセスが、自分自身や富についての印象に影響を与え、それがさらに幸福感に影響を及ぼしているという。

1. 主観的な社会経済状況

主観的な社会経済状況とは、コミュニティや社会における自身の社会的・経済的な地位に対する自己認識もしくは自己評価を指す。収入、教育、職業といった具体的な要素によって決まる客観的な社会経済状況とは異なり、主観的な社会経済状況は通常、個人の経験、他者との比較、文化や社会の規範などの要素に基づく。

研究チームによれば、主観的な社会経済状況の評価が低い人は、他者よりも機会や資産に恵まれていないと感じ、それが怒りやフラストレーションを生んでいる可能性があるという。

個人の主観的な社会経済状況は「上方比較」、つまり自分よりも上にいると見なす相手との比較に基づいていることが多い。そうした比較は、自身の環境改善のきっかけになることもあれば、ネガティブな自己認識や劣等感を招くこともある。

また、社会経済的に自分よりも劣っていると見なす相手と比較する「下方比較」が行われるケースもある。そうした比較は、良い暮らしをしているというポジティブな自己認識につながるが、だいたいにおいて役に立たない社会的行動だ。
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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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