「取り残される不安」がカジュアルセックスを後押しする科学的理由

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学術誌Current Research in Behavioral Sciencesに今年掲載された研究論文では、刺激的で面白いイベントや経験を逃して周囲から取り残されてしまうことへの不安や危惧の感情を指す「FOMO(fear of missing out)」と、性的競争心、社会的力学、精神的幸福の間には興味深い関係があることが指摘されている。

論文の主著者アダム・C・デイビスは「クイズナイト、映画鑑賞、ダンス、パーティーなどの社交イベントは、人に所属感を与え、社会的・感情的サポートを受けながら社会的ネットワークを広げ、パートナーを見つける機会を提供する」と説明。「これらの社交活動に参加しなければ、生存と繁殖の能力に影響が及ぶ可能性がある。これは、FOMOが私たちの進化的遺産の一部であることを浮き彫りにしている」と述べている。

研究チームによれば、FOMOのレベルが高まると、そうした不安を回避し短期的な性的関係などの社会的つながりを求める欲求に拍車がかかることが示唆されている。以下は、FOMOがカジュアルセックスを後押しする2つの主な理由だ。

1. FOMOの進化的起源

研究チームは、FOMOレベルが高い人ほど、より高い社会的地位への憧れ、性的競争意識、そして多数のカジュアルな性的出会いをする高い意欲を示すことを発見した。これらの行動は、社会的に排除されることを回避し、社会的・生殖的リソースを素早く確保し、さらには奪い合うという進化的な必要性からきているのかもしれない。これらのリソースは、歴史的に高い社会的地位の指標であると同時に、社会集団における生存の手段でもあった。

デイビスは「社会的、経済的、恋愛的な機会は無限にあるわけではない。人は、社会的、経済的、交配的に価値のあるリソースを(程度はそれぞれだが)奪い合う必要がある。FOMOは、他者の社会生活、職業生活、恋愛生活で何が起こっているかを私たちに知らせると同時に、私たちが望むリソースを奪い合うよう促すものだと私たちは考えている」と説明する。

「性的FOMO」は、性的な機会を逃すことへの恐怖から生じるもので、複数のカジュアルな性的関係を好むことに拍車をかける。

他の研究では、FOMOレベルの高まった人は、チャンスをつかんだり、劣等感を避けたりするために、自分の魅力を強調したり、ライバルとみなす人を軽蔑したりして、性的競争に参加する傾向があることが示唆されている。

デイビスは、そのような敵対的または攻撃的な戦略は通常、人の好感度を下げ、社会的排斥を招く可能性があるため、より調和的で尊敬をもって社会的つながりを築くことを推奨している。
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翻訳=酒匂寛・編集=遠藤宗生

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