米国のシンクタンク、戦争研究所(ISW)は「砲や砲弾の不足や西側による安全保障支援の遅れはウクライナの作戦計画に不確実性を生じさせるだろう」と警告している。「ウクライナ軍は軍需品の節約を余儀なくされる公算が大きく、前線の一部区域を優先し、限定的な後退によるダメージが最も少ない区域を犠牲にするという、厳しい決断を強いられる可能性がある」と続けている。
ウクライナ側がハルキウ州のどこかを犠牲にするのをいとわないのかは不明だ。戦前時点で人口がおよそ140万人あった州都ハルキウ市はウクライナ第2の都市であり、ウクライナの主力戦車の工場など戦略的に重要な軍需産業も抱える。
そのためクピャンスクの守備隊は持ちこたえなくてはならない。ウクライナ国防省はロシア軍の攻勢を見越して複数の機械化旅団を新たに編成していた。これらの旅団はクピャンスクに配置され、守備隊を増強している。工兵部隊は塹壕を掘り、掩蔽壕を築いている。
最も重要なのは、爆発物を搭載するFPV(1人称視点)ドローン(無人機)をウクライナの工房が月に何万機と製造していることだろう。弾薬が枯渇しているウクライナ軍は、ロシア軍部隊に対してますます多くのFPVドローンを向かわせている。およそ1000kmにおよぶ前線全体で、その数は1日数千機にのぼることもある。
しかし、FPVドローンの航続距離はわずか3kmかそこらしかなく、接触線から25km以上離れた地点に配備されることもある大砲を狙うにはとても短すぎる。ウクライナ軍のドローン操縦士はこの数カ月、クピャンスク方面で探りを入れているロシア軍の小規模な突撃部隊を、すばやく見つけてはつぶしてきている。
重量1kgほどのドローンの群れが、たとえ数千機の大群だとしても、砲兵射撃の壁に守られながら攻撃してくる戦車500両やその他の戦闘車両650両を撃退できるだろうか。結果はいずれわかるはずだ。
(forbes.com 原文)