直径5mm未満のマイクロプラスチックは、全世界の地表水の90%で発見されている。2021年に発表された研究では、そうしたマイクロプラスチックの91%を占めているのが、衣料品の製造工場や、衣服の摩耗から出るマイクロファイバーであることが明らかになっている。
チリ南部の都市プエルトモントにあるサン・セバスティアン大学の博士研究員で海洋生物学者のララ・マルコスによると、チリ領パタゴニアのフィヨルド沿岸で見つかったマイクロプラスチックの60%は、人間の活動から生じるポリエステル繊維と一致するという。
マルコスをはじめとする研究者らは、環境科学の学術誌『Science of the Total Environment』で2023年11月に研究論文を発表し、人々が生活や産業・農業活動を行っている場所から遠く離れたパタゴニアのフィヨルド海岸の食物連鎖に、海流に乗って運ばれたマイクロプラスチックが入り込んでいることを明らかにした。
「この地域の海における限られた活動から生じたと見られるペットボトルや包装用プラスチック、魚網などに由来するマイクロプラスチックが見つかったが、それらに加えて、見つかったマイクロプラスチックの半分以上(およそ60%)がポリエステル繊維であることも判明した。これは、汚染源が地元ではないことを示唆している」とマルコスは述べている。そして、ポリエステル製マイクロプラスチックの汚染源として主に考えられるのは、家庭用洗濯機で洗濯される衣類から流出するものと、工場などの産業から出るものの2つであると続けた。
したがって今回の研究結果は、人里離れたフィヨルドが、遠方を発生源とするマイクロプラスチックの影響を受けており、それらが海流によって運ばれた可能性があることを示唆している。
「気になる点は他にもある。このマイクロプラスチックが、海の食物連鎖にすでに入り込んでいるということだ。チャンネル・シュリンプ(channel shrimp)と呼ばれる甲殻類ムニダ・グレガリアの幼生の胃の中から、マイクロプラスチックが発見された」
「ムニダ・グレガリアは、この地域の生態系で重要な動物性プランクトンであり、クジラなどの大型哺乳動物には欠かせない食料だ」とマルコスは説明する。
また、2023年11月に追加実施された調査研究では、さらに南下してサンプルを採取し、外洋水を含む海洋水柱全体を調査して、マイクロプラスチックが海流に乗ってフィヨルドに入り込んでいるかを確認したという。