「底引き網漁」で大気中のCO2が増加、議論を呼ぶ研究結果

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海底に住む魚介類を捕獲するための一般的な漁法である底引き網漁の年間の二酸化炭素(CO2)排出量は、米国の輸送分野の年間排出量の約40%に相当することが、1月18日に発表された新たな研究で明らかになり、この漁法に関する以前からの主張が裏づけられた。

底引き網漁は、一度に大量の魚を獲るために用いられる漁法で、漁船に曳かれた網を海底に引きずりながら、魚やその他の海洋生物を捕獲する。この漁法においては、網が海底をこする際に、堆積物に含まれるCO2が水中に放出され、最終的に大気中に放出される。

底引き網漁によって水中で発生したCO2の55%から60%が、9年以内に大気中に放出されることが、学術誌Frontiers in Marine Scienceに掲載された研究で示された。

米国エネルギー情報局によれば、1996年から2020年までの間に、底引き網漁によって毎年約3億7000万トンのCO2が大気中に放出されており、これは2022年の米国の全輸送排出量(10億2300万トン)の約40%に相当する。

底引き網漁の年間のCO2排出量は、世界の漁船の年間燃料排出量(1億7900万トン)の2倍以上で、火山の年間排出量(2億トン)の2倍近くに相当する。

研究者らによると、底引き網漁によるCO2排出量が最も多いのは東シナ海や北海、バルト海、グリーンランド海だという。

2021年に発表された以前の研究では、底引き網漁は航空産業全体と同程度のCO2を排出しているとされていた。

米国海洋大気庁は米国西海岸沖の一部で底引き網漁を禁止しており、ニュージーランドと英国も一部の海域で禁止している。

しかし、一部の研究者は、底引き網漁がこれまで報告されているほど多くのCO2を排出しているとは考えていない。2021年の研究に反論する論文を書いた研究者たちは、これまでの論文の研究者たちが底引き網漁による炭素排出量を100倍から1000倍も過大評価したと考えている。

2021年の研究では、海底のCO2の約70%が底引き網漁によって分解され、放出される可能性があるとされていた。しかし、埋もれたCO2は酸素に反応しないため「そのほとんどは分解されない」とこれらの研究者は述べている。「我々は、2021年の研究モデルが意味をなさないと考えている」と、ウェールズにあるバンガー大学の研究者はSeafoodSource Newsに語っていた。

米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)に掲載された研究によると、底引き網漁によって捕獲される魚介類の量は年間1900万トンで、毎年捕獲される天然魚介類の4分の1以上が底引き網漁によるものという。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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