昨年のドイツの炭素排出量、70年前の低水準に

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ドイツのシンクタンク、アゴラ・エネルギーベンデは4日、2023年の同国の二酸化炭素排出量が前年比7300万トン減少し、6億7300万トンとなったと発表した。これは1950年代以降、最低の水準となる。

同シンクタンクによると、これは石炭火力発電の利用が縮小したことによるもので、その結果、炭素排出量は4400万トン減少した。資源価格の上昇と金利の引き上げにより「エネルギー多消費型企業」の生産が減少したため、昨年は産業界の炭素排出量も大幅に減少した。だが、アゴラは炭素排出量の急激な減少は、恐らく持続可能ではないと指摘している。例えば、ドイツ経済が安定して炭素排出が再び増加に転じる場合や、同国の産業界が生産を海外に移転する可能性が考えられるからだ。

ドイツでエネルギー規制を担当する連邦ネットワーク庁によると、昨年の同国の発電に占める再生可能エネルギーの割合は55%に上った。2022年時点では、この割合は約48%だった。

ドイツ政府は昨年、2045年までに炭素排出量が実質ゼロのカーボンニュートラルを目指す上で、温室効果ガス削減に向けた複数の取り組みを承認した。英ロイター通信は、ドイツ連邦議会が昨年9月、石油と天然ガスによる暖房システムを段階的に廃止する法案を可決したと伝えた。これにより、2030年までに約4000万トンの炭素排出量を削減するという。

ドイツは昨年4月、稼働中だった最後の3基の原子炉の運転を停止し、原子力発電からの脱却を完了。同国のオラフ・ショルツ首相は「ドイツの原子力発電問題は過去のものとなった」と述べ、風力発電や太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの拡大を進める姿勢を示した。

ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」への依存は、欧州のロシア産ガスへの依存度を高めるものだとして、ドイツ政府の中でも批判の声が上がっていた。実際、ロシアがウクライナに侵攻したことで、欧州諸国はエネルギー危機に陥った。米AP通信によると、ドイツのロベルト・ハベック副首相兼経済・気候相は、ウクライナ侵攻がエネルギーの「価格危機」と工業生産の減少をもたらしていると批判した。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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