気候変動で大転換を迫られるシーフード産業 エビは減りクラゲは増える?

米メーン州テナンツ港沖でのロブスター漁(Shawn Patrick Ouellette/Portland Portland Press Herald via Getty Images)

記録的な海洋温暖化、海流の変化、沿岸地域で続く開発の影響で、地球は変容しつつある。これらすべてが関連して起きる気候パターンの変化は、世界の海産物供給を大きく揺るがし、2050年までに年間100億ドル(約1兆4600億円)の打撃を漁業に与える恐れがある。

米紙ワシントン・ポストによると、海水温はこの1年間上昇を続けており、そのペースは海洋温暖化の数十年平均を上回る。今年6月の世界の海水温は1982~2011年の平均より約1度高く、世界でも特によく食べられている魚介類の生息地に大打撃を与えた。

米紙ボストン・グローブによれば、ロブスター、青魚、カニ、カレイ、ムール貝が主要な輸出品となっている米北東部メーン湾では、1980年以降、世界の海の平均水温の3倍の速さで海水の温暖化が進行。沿岸部に生息する天然ムール貝の個体数は60%減少した。

メーン湾の温暖化は、メーン州のロブスター産業をも脅かしている。ロブスター漁で有名なバイナルヘイブン島の漁獲量は2021年、直近十年間で最低に落ち込んだという。ロブスターの生息地は1970年頃と比較して160キロ北上し、より海水温の低いカナダ近海へと移動した。

アラスカ州沖のベーリング海では、2022年にズワイガニの生息数が100億匹も減少し、地元漁業は壊滅的な損害を被った。原因は海水温の上昇だと科学者らはみている。米海洋大気庁(NOAA)のエリン・フィドワはPBSテレビの取材に、ベーリング海の海氷が減少したことで、稚ガニが十分な餌を取れずに飢えたり病気にかかりやすくなったりした可能性があると説明した。

海水温の上昇はムール貝やカキの殻の成長を阻害する要因にもなっており、従来のカキの生息地は縮小しつつある。一方、海水温が高いと、魚介類に生息し食中毒の原因となる腸炎ビブリオ菌が増殖しやすくなるため、貝の生食の危険性もかつてなく高まっている。

米国水産協会(NFI)は、米国人が最もよく食べるシーフード2位であるサケにもリスクが迫っていると指摘する。米国で消費されるサケの3分の2は養殖だが、養殖場は海水温の上昇に伴って大量死に悩まされており、サケの養殖が可能な水温の海域は狭まる一方だ。「(サケ養殖)業界は、新たな養殖場のための用地を失いつつある」と2021年の調査結果には記されている。
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翻訳・編集=荻原藤緒

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