「人食いバクテリア」が米東海岸を北上 温暖化で生息範囲拡大か

Photo by Joe Raedle/Getty Images

米東海岸では近年、海中に生息する「人食いバクテリア」への感染例が増加しており、気候変動による海水温の上昇が原因となっている可能性があるとの研究結果が発表された。

ビブリオ・バルニフィカスはコレラ菌と同じ種類に属する細菌で、温暖な地域の海中に生息。傷口などから人体に侵入し、感染症を引き起こす。

感染はまれだが、致死率は5分の1と高く、発症から1~2日以内に死に至る場合もある。壊死性筋膜炎を起こすことから「人食いバクテリア」と呼ばれている。

科学誌サイエンティフィック・リポーツに23日発表された論文によると、米東海岸での感染例は、ここ30年間で年間10件から80件に増加。以前はメキシコ湾に限定されていたが、米疾病対策センター(CDC)のデータを分析したところ、現在は最も北方でフィラデルフィアでも感染者が確認されているという。

研究チームは、今後の気温上昇や、感染リスクの高い高齢者の増加により、20年以内にはこの細菌が人口の多いニューヨーク周辺まで北上し、年間の感染件数は2倍に増える可能性があると予想している。

英イースト・アングリア大学の研究者で、論文の筆頭著者であるエリザベス・アーチャーはフォーブスに対し、この細菌は沿岸部の生態系の一部であり、駆逐は不可能で非現実的だと説明。感染防止策が重要だと強調した。

今回の研究では、細菌の北上と気候変動との関連については断定していないが、今後の拡大を予測する上では気候変動による気温上昇が考慮された。ビブリオ・バルニフィカスは西海岸などにも生息しているが、チームは東海岸に限定して研究を行った。

forbes.com 原文

翻訳・編集=遠藤宗生

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