猛暑と極寒、どちらがより多くの人に死をもたらすか

Getty Images

この夏、世界中のメディアで、米国本土、欧州、アジアのかなりの部分を「ヒートドーム」が覆い、居座り続けていることに関連したニュースが大きく報じられている(ヒートドームは、高温の空気が巨大な高気圧の塊の下に閉じ込められ、滞留する現象)。

度を越した暑さは、人の健康に深刻な危険をもたらすおそれがある。熱疲労(中等症の熱中症。大量の汗により、体内の水分と塩分が失われた状態)などの、命に関わる症状を引き起こすリスクがあるからだ。また、熱射病(重篤な熱中症。体温が急激かつ大幅に上昇し、体温を下げる仕組みがストップした状態)になり、発汗量が減って危険な状態に陥ることもある。

しかし、環境の変化に対して最も脆弱な人たちにとっては、暑さによる影響は、直接的に目に見えるものだけではない。熱波は一般に、サイレントキラーとされている。長く続いた熱波のあと、研究者が死亡率データを精査し、超過死亡数の急上昇が確認されるまでには、数週間ないし数カ月の時間を要する。2022年の夏には、欧州における超過死亡数が6万1000人以上に達した。

2000年から2019年までの間に、暑さにさらされたことによる年間の死亡者数は世界的に上昇した。この20年間はちょうど、地球の平均気温が摂氏0.5度上昇した期間とも重なる。高温に関連する死者数は、アジア、アフリカ、南欧、そして北米で、他の地域と比べてひときわ多くなっている。

高温環境に置かれることが死につながりやすい層としては、高血圧をはじめとする心臓血管系の疾患を持つ者が挙げられる。極端に暑い環境では、こうした患者の心臓に、さらに負担がかかる。他にも、呼吸器や腎臓に症状を抱える者が影響を受ける可能性がある。

暑さで亡くなる人の大半は高齢者だが、これは、熱波によってもたらされる不均衡状態にうまく対応できない傾向があるためだ。言い換えれば、高齢者の体は、強烈な暑さにさらされた時に、体温の制御が難しくなるということだ。
次ページ > 熱波よりも多くの死者をもたらす寒波

翻訳=長谷 睦/ガリレオ

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事