海洋熱波について、英リーズ大学国際気候センターのピアーズ・フォースターは「一部の海洋生物にとって差し迫った脅威となっている」と述べた。
熱帯地域では、2050年までに海産物の潜在的漁獲量が40%減少すると予想されている。
米ラジオ番組サイエンス・フライデーによると、世界の漁業は2050年までに年間100億ドルもの収入を失う恐れがあり、漁業への依存度が高いモルディブ、アイスランド、ポルトガルなどが最も大きな打撃を受けるとみられている。調査会社フォーチュン・ビジネス・インサイトは、2022年の世界の海産物市場の規模を3332億5000万ドル(約48兆円)と評価している。
もっとも、すべての生物が海水温の上昇によって悪影響を受けるわけではない。生物学者や漁業関係者の話では、イカは変わり続ける海水温の中で生き抜くため急速に進化しているのみならず、むしろ繁栄しているという。米科学誌カレント・バイオロジーに発表された研究によれば、イカやタコなどの頭足類の世界生息数はこの60年間で増加した。学術誌Marine and Coastal Fisheriesに掲載された別の研究では、太平洋沿岸部の頭足類の個体数は1998~2019年に39倍に増加し、米北西部オレゴン州ではイカの北上を受けて初めてイカ釣り漁が行われるようになったという。
マイナス面はというと、食用イカはエビを餌としているため、特に猛烈な熱波が訪れると、一部のエビの個体群が崩壊する現象が確認されている。
一方、クラゲは暖かい海でも繁殖できることから、中国やベトナムでよく見られるクラゲを使ったサラダなど、クラゲ料理が持続可能性の高いシーフードとして注目を浴びそうだとサイエンス・フライデーは紹介している。
(forbes.com 原文)