気候・環境

2023.08.27 09:00

気候変動で大転換を迫られるシーフード産業 エビは減りクラゲは増える?

米メーン州テナンツ港沖でのロブスター漁(Shawn Patrick Ouellette/Portland Portland Press Herald via Getty Images)

欧州連合(EU)の気象情報機関コペルニクス気候変動サービスは、世界の平均海面水温が今年7月30日に20.96度を記録し、2016年3月の20.95度を上回って観測史上最高を更新したと発表した。北大西洋の一部ではカテゴリー4(極度)の海洋熱波が発生し、平年より海水温が5度高い海域もあった。ウッズホール海洋研究所によると、大気中の温室効果ガスの濃度が高まって熱を溜め込み、それが海洋に吸収されることで海水温の上昇が起きている。海水の温暖化は海洋生物を脅かし、サンゴ礁を死滅させ、熱帯低気圧の強大化をもたらす。
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海洋熱波について、英リーズ大学国際気候センターのピアーズ・フォースターは「一部の海洋生物にとって差し迫った脅威となっている」と述べた

熱帯地域では、2050年までに海産物の潜在的漁獲量が40%減少すると予想されている。

米ラジオ番組サイエンス・フライデーによると、世界の漁業は2050年までに年間100億ドルもの収入を失う恐れがあり、漁業への依存度が高いモルディブ、アイスランド、ポルトガルなどが最も大きな打撃を受けるとみられている。調査会社フォーチュン・ビジネス・インサイトは、2022年の世界の海産物市場の規模を3332億5000万ドル(約48兆円)と評価している。
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もっとも、すべての生物が海水温の上昇によって悪影響を受けるわけではない。生物学者や漁業関係者の話では、イカは変わり続ける海水温の中で生き抜くため急速に進化しているのみならず、むしろ繁栄しているという。米科学誌カレント・バイオロジーに発表された研究によれば、イカやタコなどの頭足類の世界生息数はこの60年間で増加した。学術誌Marine and Coastal Fisheriesに掲載された別の研究では、太平洋沿岸部の頭足類の個体数は1998~2019年に39倍に増加し、米北西部オレゴン州ではイカの北上を受けて初めてイカ釣り漁が行われるようになったという。

マイナス面はというと、食用イカはエビを餌としているため、特に猛烈な熱波が訪れると、一部のエビの個体群が崩壊する現象が確認されている。

一方、クラゲは暖かい海でも繁殖できることから、中国やベトナムでよく見られるクラゲを使ったサラダなど、クラゲ料理が持続可能性の高いシーフードとして注目を浴びそうだとサイエンス・フライデーは紹介している。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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