2012年の政権交代から10年以上続く不動産価格の高騰をもたらしたのは、低金利に他ならない。2023年には日本銀行の総裁に植田和男氏が就任し、長期金利の上限が1%を超えることを事実上、容認する姿勢を見せたものの、大規模な金融緩和策は維持。固定系の住宅ローンの金利水準は若干の上昇が見られたが、変動金利は下がるどころか金融機関間の競争が激化し、もう一段、金利を下げた。
とはいえ、これからさらに政策金利が下がることはなく、日本でも一定の物価上昇が見られていることから、2024年にはいつ、どの程度、金利が上がるのかが注目される。
金利上昇の鍵を握るのは「賃上げ」
日銀は2%の物価目標の達成を掲げているが、すでに消費者物価上昇率は1年以上、継続して2%を超えて推移している。それでも政策転換に踏み切らないのは、賃金が十分に上がっていないからだ。この段階で利上げをすれば「悪いインフレ」を助長することとなり、企業の業績悪化や不動産価格の下落が懸念される。新年度に向けて、春季労使交渉が本格化するのは1月。3月中旬から4月にかけて交渉結果がまとめられる。ここで一定の賃上げが確認されれば「良いインフレ」の兆しと判断できることから、日銀のスタンスを変える一助となるだろう。米国で住宅ローンが7%台。日本はどこまで上がる?
市場原理的には、金利が上がれば不動産価格は下がる。これは、家を購入する人の購買能力が下がってしまうからだ。とはいえ、利上げがあったとしても、24年に不動産市場に与える影響は限定的だと推察する。こう考える理由の一つは、利上げ幅が大きくならない可能性が高いことにある。米国のFRB、欧州のECBは22年から金融引き締めへと転換し、23年末時点の政策金利は4〜5%台となっている。米国の住宅ローン金利は7%台まで上昇したが、日本がこの程度まで利上げすることはないはずだ。というより「できない」というのが正しいだろう。
日銀の自己資本は、23年9月末時点で12兆円。それに対し、国債の含み損は10.5兆円に上る。国債は、BIS(国際決済銀行)の決まりにより購入時の価格で評価できるものの、日銀が実質的に債務超過に陥ることは避けたいはずだ。
FRBの債務超過は10兆円規模に達すると言われているが、ドルは表面上、基軸通貨であることからそもそも前提が異なる。日銀が債務超過にならない程度に上げられるのは、せいぜい2%までが限度ではないだろうか。賃上げが確認できたとしても、24年に政策転換によって急激かつ大幅に金利が上がるということはないはずだ。