初回は、「不動産バブルと市場の三極化」。このテーマについて論じるには、まず「不動産バブル」という言葉の定義から考えなければならないだろう。不動産バブルを「不動産平均価格の上昇」と捉えるとするならば、2024年もこの傾向は続くものと考えられる。23年11月の東京都23区の新築マンション価格は1億円を超え、23年には数十億円、数百億円のマンションが東京や大阪で分譲されるという景気の良い話題も目立った。23年末の日経平均株価は、3万3000〜4000円ほどで推移。2022年頭に上梓した拙著『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』のタイトルも現実味を帯びてきた。
しかし、不動産平均価格の上昇の背景で、市場の三極化(1.価格が維持あるいは上がり続ける物件、2. なだらかに下落する物件、3.限りなく無価値になっていく物件)は確実に進行している。ミクロな視点で見れば、不動産バブルどころか価格の下落が止まらないエリアもある。そして2024年以降は、さらに市場格差が拡大すると考えられる。
潮目に変化。増える在庫と下落する新規物件価格
不動産価格の高騰は、遡れば2012年の政権交代とそれに伴うアベノミクスや黒田バズーカによってもたらされた。金利がどんどん低下したことで、マンションを中心に価格が上昇。コロナ禍での旺盛な住み替え需要がさらに後押しし、価格高騰は一戸建てや住宅地にも波及した。しかし、2022年後半頃から需要には落ち着きが見られ、23年には潮目が変わった。戸建て、マンション共に在庫物件は増え、在庫や新規登録物件の価格は下落し始めているのだ。特に首都圏の戸建ては顕著で、コロナ禍で在宅勤務やお家時間が増えたことから高まっていた需要は一巡し、23年末の在庫物件数は前年比約4割増にまで膨れ上がっている。
とはいえ、平均価格を見れば中古戸建てはほぼ横ばい。中古マンションにいたっては、いまだ高騰を続けており、23年後半には在庫と新規登録の価格を成約価格が上回るという稀有な状況も見られている。
積み上がる在庫と下落する新規登録物件価格を尻目に、上がり続ける成約価格。この現象を引き起こしているものこそ、市場の三極化なのである。
都市部・駅近・タワー、好条件マンションのバブルは継続
不動産の平均価格を押し上げているのは、他の不動産と比較して金額が大きい好条件の不動産だ。特に都市部・駅前・駅近・大規模・タワーに代表される好条件のマンションは、今も高い需要がある。この理由は、先述のとおりコロナ禍で旺盛になった住み替え需要が一巡したとともに、高騰した不動産を購入できる層が限られているからだ。中古マンションであっても、都心3区のマンション平米単価は200万円を超えている。50平米以上の物件価格は、1億円超ということになる。この金額が出せるのは、もはやパワーカップルや富裕層、国内外の投資家だけだろう。これらの層が買い求めるのは、利便性や資産性、流動性が高い住まい。すなわち、平均価格を押し上げているマンションだ。
これは何も、東京や大阪などの大都市だけで見られている現象ではない。三極化はフラクタル(※)に進行しており、例え郊外であっても利便性が高く、人が多いエリアでは億ションも見られる。
※雪の結晶などのように、一部分と全体の形が相似している構造のこと