避難民の90%は低・中所得国へ 難民支援にいま必要なこと

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難民危機に対処するためには、緊急人道的対応だけでは十分ではありません。そのためには、難民に対する考え方を変え、受け入れ地域のコミュニティにおける難民との共生が必要です。

このような活動を行うことは、受け入れ国の負担ともなり得るため、企業、財団、都市、NGO、支援団体などの第三者が介入することも必要です。本題についてWEFのアジェンダからご紹介します。


最近、私たちは草木がほとんど生育しない乾燥地、チャド東部アドレという町を訪問し、そこで、悲劇と希望を目の当たりにしました。隣接するスーダンで起きている紛争から逃れて新たにチャドに避難した人々が抱える、殺人、強姦、略奪の話は悲劇そのものでした。極めて困難な課題を抱えつつも、故郷に戻ることができるその日まで、チャドがスーダン難民を保護し安全確保に努めていることは希望の光です。

アドレでは、学びや仕事を通じ社会に貢献したいと熱望する難民たちにも出会いました。彼らは、医療従事者、技術者、農家、家畜の世話をする人、弁護士、教師、学生などです。また、気候変動や食料不安の影響を受け、人口の42%が貧困ライン以下での生活を余儀なくされている受け入れ国の現実も目の当たりにしました。

私たちが見た状況は、難民支援に新しいアプローチが求められていることを示しています。

長期の難民支援

まず、難民状況は長期化する傾向があることを理解する必要があります。国際的な危機に対する政治的な解決策がない場合、何百万もの難民が、何年も、時には何十年も流浪し続けることになるのです。つまり、緊急の人道的対応だけでは不十分で、中期的な開発アプローチが必要となり、受け入れ国は、財政的にも社会的にも長期にわたり持続可能な政策を採用することが求められます。

国際社会にとって、難民支援の課題は、強力かつ予測可能な支援を長期的に提供することです。難民を保護し人道支援を行いつつ、解決策を見出すためには、危機が始まってから解決に至るまでのプロセスに対処する必要があります。こうした課題へは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と、長期的な開発に投資する世界銀行が対応しています。最終的な目標は、難民が故郷に安全に帰ることができるように状況を改善することです。

難民に対する考え方を変える

次に重要なのが、難民と共に歩むインクルーシブな社会の実現に取り組むことです。援助から雇用へ、人道支援団体が提供する独立した医療・教育支援を国際社会の財政支援のもと国が提供する仕組みへと、支援アプローチを変化させること。経済的機会の限られた地域から、仕事が得られる可能性の高い国内の他の地域へ、難民の移動を自由にすること。包摂性の本質的な実現には、こうした難民支援のあり方の変革が必要です。
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文=Anna Bjerde, Managing Director of Operations, The World Bank; Filippo Grandi, United Nations High Commissioner for Refugees, (UNHCR)

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