ビジネス

2024.01.25 09:00

デジタルを全社的な「仕組み」に。450億円投資でDXを加速する味の素

Forbes JAPAN編集部
DX推進委員会の下にはマーケティング、SCM(サプライチェーンマネジメント)、R&D(研究開発)、DX人財育成、スマートファクトリー、データマネジメントという6つの小委員会が設置され、DXの取り組みが進められている。23年4月には、マーケティング小委員会を起点に、「マーケティングデザインセンター」を発足させた。顧客の属性や行動履歴に基づいて製品やサービスを提供するパーソナライズドマーケティングをはじめ、マーケティングへのデジタル活用がより推し進められることとなった。

香田は「DXの成果が見えるようになってきた」と語るが、その背景には「オペレーショナル・エクセレンス」という考え方を全社的に導入し、部門間の意識のすり合わせがとれるようになってきたことがある。「常に全員が顧客の価値を考えて、改善に取り組む。そのためには生産、物流、販売と、お客様へ価値を届けるまでの各部門が、お互いに目を配る必要があります。その考え方を浸透させ、さらにデータ連携によって一気通貫してモノの動きを追い、顧客の志向を検証するといった、部門を横断した取り組みがDXの鍵になります」

DX各ステージが進められるなか、香田はDX4.0の好事例として海外での事業を挙げる。ベトナム味の素社は12年から現地行政と連携し、同国全土で栄養バランスの良い学校給食の普及を目指す「学校給食プロジェクト」を進めてきた。そこへテクノロジーを導入し、20年からは妊娠中から産後に至る母子の栄養・健康管理を目的としたソフトウェアツールの提供を開始。マネタイズ方法を確立できれば、将来的にはDX4.0のひとつの理想的な事例になるかもしれない。

もっとも、「事業が未来永劫続くことはない。常に進化が必要」だと香田は指摘する。そして、それを促すのが彼自身の役割だとも。

「その『進化』をデジタルなどの先進技術を使い、CEO(最高経営責任者)と一緒に考えながら実現する。それがテクノロジーリーダーの役割だと思います」


香田隆之◎東京工業大学大学院総合理化学研究科修了。1989年に味の素入社。アミノ酸にかかわる技術系領域に携わる。生産統括センター長、執行役員を経て2019年常務執行役員、21年CXO兼DX推進部長、22年4月より現職。

文=加藤智朗 撮影=苅部太郎

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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