ビジネス

2023.12.15 14:00

みそ汁のDX化で業界に新風を。伝統食がブレイクスルーする方法

Forbes JAPAN編集部

イラストレーション=岡村亮太

日本は魅力的な伝統料理や食材があふれている。みそを「完全食」市場に取り入れて成功した企業の取り組みとは?マクアケ創業者による好評連載第36回。


日本には伝統的な食材が山ほどある。例えばみそやしょうゆなど、全国で知られているメジャーな食材や調味料にはじまり、「へしこ」や「きりたんぽ」などの各地域を代表するような料理や加工品も含めると、実に多種多様だ。日本の食文化は、昔から非常に豊かであることに気づかされる。

ただ、そうした伝統的な食材について経済や産業という観点で見ると、市場規模はどんどん縮小して厳しい状況にあるのも現状だ。特にみそに関しては、この35年で400蔵以上が廃業したというが、このままこの分野の食材が衰退していくことは、みそ汁好きな私としても、日本人としても悲しいことである。そんななかで伝統の食文化を守るために戦っている事業者もたくさんいる。

今私が注目しているのが、「MISOVATION」というみそのスタートアップだ。まさに日本の伝統食であるみそ業界に新しい風を吹かせている会社で、まず彼らが目をつけたのが、完全栄養食(完全食)の市場である。完全食とは、一日に必要とされる栄養素がすべて含まれている食品のことを指す。昨今、この分野には大手食品メーカーも参入して次々と新商品を発表しており、非常に盛り上がっている新市場だ。

矢野経済研究所のリサーチによれば、2022年に144億円だった市場が2030年には546億円になると見込まれており、まさに新しい食文化としての将来性の高さがうかがえる。健康志向の高まりと、時短意識の「タイパ(タイムパフォーマンス)」志向の高まりも相まって、伸びているのだろう。MISOVATIONがまず仕掛けたことは、まさにこの新しい成長市場に、「みそ」で何かできないかという発想だった。

みそ業界を盛り上げるべく、さまざまなみそ蔵ともコラボ。栄養価の高い食材を使い、完全食に仕上げたみそ汁の冷凍パッケージ商品をつくって売り出した。完全食という成長産業の波に乗りながら、特定のみそ蔵ではない第3者ポジションとして、さまざまなみそ蔵と一緒に取り組める事業を祖業として始めることで、みそ業界にとっても新しい商流づくりのチャレンジとなっている。
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文=中山亮太郎

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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