みそ汁のDX化で、業界に革命を
創業したのは栄養士の資格をもつ斉藤悠斗氏だ。かつて会社員だった時代には激務が続き、栄養士であるにもかかわらず自身の食生活が健康的ではないことに課題を感じた彼は、「世界でいちばん健康的な料理とは何か」を考えたという。その際に第一想起したのが「みそ汁」だった。日本人の口にも合い、毎日食べても違和感がないものということで、みそ汁をテーマに健康な食生活づくりへ取り組むことを事業の柱に決めたという。また、彼がみそ業界にもち込んだのは、完全食の概念だけでなく、パーソナライズ化の概念でもあった。栄養士としてのノウハウを生かし、Web診断で味の好みと足りない栄養素の分析を顧客一人ひとりにしてもらえる仕組みを構築して、それぞれの足りない栄養素と味の好みにあったインスタントのみそ汁を提供する新サービスをスタートさせた。まさにみそ汁のDXだ。革命は辺境から起きるというが、まったく違う切り口の出自の起業家だからこそ、業界に新しい風を吹き込むことができたわけだ。
成長市場に技術や消費トレンドなどを客観的に取り込んで、伝統食にイノベーションを起こす彼らのやりかたは、ほかの一般的な伝統食にも地域独自の伝統食の担い手にもヒントとなるかもしれない。どの伝統食もおいしいからこそ今に至るまで続いている。それが人々の生活スタイルや志向の変化に合わせて、技術の変化も取り入れながら、これからも続いていってほしい。もしかしたら、そのなかから世界に広がる新たな伝統食が生まれるかもしれない。
なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズに上場した。