ウクライナのドローン操縦士が無慈悲だったのは、ロシア軍が無慈悲だからだ。家を次々に壊されているウクライナ人と違って、ロシア人はいつでもウクライナを去り、おぞましい戦争を終わらせることができるにもかかわらず、そうしないからだ。
一方、怯える戦友を裏切ったロシア兵が何を考えていたのかは、それほど明らかではない。西側の戦争哲学では、兵士たちが戦闘を通じて強い絆を築き、国や大義といった抽象的な対象ではなく、戦友という具体的な相手への愛情に突き動かされるようになるというのは、公理のようなものになっている。
こうした戦友愛は、前線のウクライナ軍部隊でもはっきり認められる。西側の考え方を次第に内面化するようになっているウクライナ兵たちは、ロシア軍に対して戦うと同時に仲間のために戦っており、互いをできるかぎり生き延びられるようにするため、非常に大きな危険を受け入れ合っている。
ウクライナ軍第47独立機械化旅団のある分隊を例に説明しよう。東部ドネツク州アウジーイウカの北でこの分隊が孤立し、ロシア軍の装甲車両による攻撃にさらされた時の状況は、荒涼とした場所でロシア兵2人が生前最後に過ごした数時間とはまったく異なっている。
兵士らのヘルメットに装着されたカメラは、孤立状態に陥ったこの分隊が、集団として生き残るために戦う様子を捉えていた。衛生兵が負傷者を応急手当てする。動ける兵士は敵に向けて制圧射撃を行う。分隊長らは無線で旅団側と連絡をとり、退避のための応援を要請する。そして、アウジーイウカ守備隊のとっておきの兵器である米国製M2ブラッドレー歩兵戦闘車が救援に駆けつける──。
分隊から旅団にいたる各レベルで兵士たちが互いに尊重し合い、大事にし合っていることは、映像のどのコマからもひしひしと伝わってくる。ロシア兵がウクライナのドローンに向かって、仲間の兵士を先に殺してくれと頼むのとは対照的だ。